技術者人材育成総括2020 vol.129
公開日: 2021年1月4日 | 最終更新日: 2022年1月15日
Tags: OJTの注意点, テレワーク, マネジメント, メールマガジンバックナンバー, 技術コミュニケーション, 技術者のモチベーション, 技術者の自主性と実行力を育むために, 技術者人材育成, 生産性向上
今週は新春特別号である 技術者人材育成総括2020 として、
昨年のメルマガでアクセス数が多く、読者の方の関心が高かったものを中心に抜粋して振り返ってみたいと思います。
1. 技術の基礎知見 を高めるための調査をどのようにやらせればいいかわからない Vol.104
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今日のワンポイントは、
「技術の基礎知見を高めるための調査をどのようにやらせればいいかわからない」
という時には、
「あくまで専門書籍を中心に調べさせ、インターネット検索はその補足とする」
ということを指示してください。
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技術者が成長するか否かは「知的好奇心」と「自分で調べるという積極性」の2点があるか否かでほぼ決まります。
情報技術が進化した現代でスピード感も上がっていますが、
それでも結局技術者にとっての基本である技術的知見の本質は不変です。
この本質が述べられている可能性が高いのはやはり、紙媒体の専門書。
技術者成長要点の2点を理解した上で、専門書を中心とした粘り強い鍛錬をするということが、
結局のところ力を有する技術者が育つか否かの分岐点といえます。
2. 若手技術者に技術的な 資格 を取らせるべきか否か Vol.106
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今日のワンポイントは、
「若手技術者に技術的な資格を取らせるべきか否か」
という時には、
「実務経験を最優先させる」
という前提で、
「その資格取得が事業運営に必須のもの、または自己啓発で業務時間外に取り組んでいるかどうか」
という観点で判断してください。
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・有資格者ということで優位性を感じることができる
・転職する等のケースになった場合、有利になる
というどちらか、または両方が動機となって技術者は資格に興味を示すようです。
資格が企業の事業運営に直結する物であれば問答無用でとる必要がありますが、
多くの場合、技術関係の資格は技術者としての戦力とはあまり相関がありません。
想定された範囲での知識量を計測するような、教育の延長にあるような知見は、
想定外のことが多くある実践の場ではあまり役に立たないからです。
とはいえ、資格の勉強が若手技術者のモチベーションになっているのであれば、
それは自己啓発として認めてあげることは重要です。
3. 若手技術者にデータの 相対比較 をやらせた際の検証が甘い Vol.108
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今日のワンポイントは、
「若手技術者にデータの相対比較をやらせた際の検証が甘い」
という時には、
「数値の羅列の場合はグラフ化し、チャートの場合はその画像を同じスケールで印刷の上、重ね合わせる」
という事をやらせてみてください。
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技術者の実務において「データの相対比較」は大変重要な業務の一つです。
見にくい数値の羅列を見ながら議論することも見受けられますが、
やはりまずは視覚的にデータを俯瞰して捉えるためにグラフ化する、
ということが技術者としての第一歩になります。
合わせて、このグラフを印刷して透かして見る等、アナログ的な柔軟性もポイントになります。
4. これは 自分の仕事ではない という言動が若手技術者に見える Vol.109
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今日のワンポイントは、
「これは自分の仕事ではないという言動が若手技術者に見える」
という時には、
「仕事の目的と必要なアウトプットを活字で示す」
という事を行ってください。
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「自分が少しでもわかる事、自分が興味ある事の仕事に集中し、それ以外を排除する」
という若手技術者に多く見られる思考の結果、自分の仕事というものに線引きするという言動の典型例です。
しかし、企業として必要な技術者に求められるのは
・自ら課題を見つける、というためには自らの業務をより高い視点から見る
・上記の課題を解決に向けて実行する
という2点で、結局のところ幅広い専門性や実務経験を踏まえた経験値が求められます。
若手技術者の業務の幅を広げてもらうには、当然ながら若手技術者のスキルアップや心構えが重要ですが、
何より重要なのはマネジメントが活字で目的とアウトプットを示せるかになります。
技術者を率いるマネジメントに求められる典型的なスキルの一つといえるでしょう。
5. 在宅勤務の若手技術者の 進捗管理 の方法がわからない Vol.111
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今日のワンポイントは、
「在宅勤務の若手技術者の進捗管理の方法がわからない」
という時には、
「前週の計画に対し、今週の実績は何かという計画と実績を活字で報告させる」
ということを行ってください。
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COVID-19の影響で急増した技術者の在宅勤務。
テレワークという言葉が当たり前になりつつある昨今ですが、
離れたところにいる技術者たちの業務進捗管理をどのよう行うか、
については困難を伴うことが多いようです。
このような状況で発揮するのは、やはり活字を基本としたベーススキルです。
前週の計画と今週の実績が1:1になっているかを確認し、
それを活字で報告させるというのが最も適したやり方です。
若手技術者の論理的思考力を養うことに加え、マネジメント側の論理的思考力も無いと、
結局このような進捗管理もできないという、活字をベースとした論理的思考力の重要性を再認識いただければ幸いです。
6. 何度説明しても若手技術者が 指示内容 をなかなか理解しない Vol.114
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今日のワンポイントは、
「何度説明しても若手技術者が指示内容をなかなか理解しない」
という時には、
「指示内容を予め活字化し、ポイントを絞って短時間で説明する」
ということを心がけてください。
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このようなコラムがよく読まれているということは、
指示を受ける若手技術者の論理的思考力が不足していること、
そして何よりマネジメントの指示にも課題があることを映し出していると考えられます。
指示事項はできる限り活字化することが極めて重要です。
そして、指示する側はポイントを絞る、つまり要点抽出の能力が強く求められます。
指示を受ける側も、そして指示する側も感情を極力抑え、
活字媒体でやり取りするという基本を徹底すること、
そしてマネジメントは発散しそうになる自らの発言を控えるという取り組みが基本です。
7. 技術力は高いがまとめる力、伝える力が弱い技術者をどう生かせばいいかわからない Vol.117
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今日のワンポイントは、
「技術力は高いがまとめる力、伝える力が弱い技術者をどう生かせばいいかわからない」
という時には、
「文章作成力の高い若手技術者を抜擢し、技術力の高い技術者の下につけ、代わりに発信させる」
ということを行わせてください。
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このコラムが多くの方に読まれていたというのは意外でした。
技術力の高さとまとめる力や伝える力、つまり論理的思考力は一般的に比例関係にあるからです。
天性的な技術的センスのある方は、少し教えるとスポンジに水を吸収するようにそれを理解し、
こちらの言った要点を理解の上、自らの工夫で具現化します。
もしかすると上記のような指導を受けられずに、
会社内で力を持て余している(または、そのように見える)技術者が潜在的に多いのかもしれません。
いずれにしても、伝える力の弱い技術力のある技術者を輝かせるには、
それをきちんと内外に伝える、そしてそれを活字化できる、というスキルを有する技術者を下につけることがポイントです。
ただし、情報伝達力と活字化の力のある若手技術者にその立場だけを求めると、
下についたその技術者も上げ止まって伝書鳩になってしまうので、
どこかで独り立ちさせるという取り組みが重要であることを合わせて述べておきます。
8. 若手技術者に新しい技術を生み出す 即戦力 を身につけさせたい Vol.121
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今日のワンポイントは、
「若手技術者に新しい技術を生み出す即戦力をみにつけさせたい」
という時には、
「フォローしながらも時間制限の厳しい開発業務を担当させる」
ということに取り組んでください。
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やはり即戦力化はすべての企業の願いです。
そして技術者に対してそのスキルを持たせるには、
時間軸の厳しい仕事に取り組ませ、徹底したプレッシャーの中で実践力を磨くことに限ります。
その中でさらに重要なのがマネジメントのフォローです。
口出ししすぎず、失敗をさせ、自分で調べるよう誘導する、
という付きつ離れずの距離感で伴走することがマネジメントには求められます。
9. モチベーションが下がり立ち止まっているように見える若手技術者 Vol.125
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今日のワンポイントは、
「モチベーションが下がり立ち止まっているように見える若手技術者」
が目についた際には、
「技術的な専門性以外の打ち合わせやミーティングの主導権を握るよう努力する」
ということを指示してあげてください。
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これは実際に顧問先で大きな成果の出た取り組みの一つです。
入社から半年以上が経過し、しかしなかなかうまく自らの力が発揮できない若手技術者に対し、
経験による差が大きく出てしまう技術的業務ではなく、打ち合わせなどの一般業務を基軸に、
その場を先導するということでリズムを取り戻してもらうのです。
ただし、指示を行うマネジメントが打ち合わせの進め方をきちんと理解しているということが前提にあるのは言うまでもありません。
10. 技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 してしまう Vol.127
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今日のワンポイントは、
「技術的な理論や評価結果無しに選択肢から排除してしまう」
ということが目についた場合は、
「選択肢として排除していいという明確な技術理論または技術評価結果を示す」
ということを指示してください。
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今の日本に蔓延する高効率化や高生産性という言葉を、
短絡的な言葉で解釈して進んでいる極めて危険な状態といえるでしょう。
規模の大きな企業は何も考えずに他の企業に丸投げし、
それを受けた中小企業はそれをそのまま受け取り、
納期やコストといったわかりやすいところだけを考えて抜け漏れだらけの技術評価を進める。
コストや納期が大切だというのは教えれば小学生でも理解できますし、
丸投げするだけであれば小学生はおろか、未就学児でもできることです。
技術者が技術的な判断基準や評価方法を提案せずに選択肢を削るということが、
自らの存在価値を低くしていることに気が付かなければいけません。
技術者というのは何をする仕事なのか。
若手技術者はもちろんですが、マネジメントも今一度よく考えるべきことです。
いかがでしたでしょうか。
やはり例年同様、
「若手技術者とマネジメントのコミュニケーションの難しさ」
というのが課題とされているのが浮かび上がってきています。
在宅勤務の増加がそれに拍車をかけているのは間違いないでしょう。
これを乗り越えるには、何度も述べているように
「活字を媒体とした要点抽出力」
というベーススキルを、マネジメントと若手技術者が有することしかありません。
これが万能解であることは、概ね理解いただけるようですが、
「当該スキルの成長には、かなりの鍛錬が必要である」
という事実があるため、多くの技術者が乗り越えられていないと感じています。
技術報告書を中心とした文章作成力の鍛錬を徹底する。
結局のところこのような日々の鍛錬こそが最短の道であることを認識し、
若手技術者のみならず、マネジメントも危機感を持って取り組むことこそが、
万能解であることにある意味「観念」することが第一歩といえるかもしれません。
本年も引き続き、技術者育成に不可欠な要点を様々な切り口からご紹介できればと思います。
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