技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 してしまう Vol.127
公開日: 2020年12月7日 | 最終更新日: 2020年12月7日
Tags: OJTの注意点, メールマガジンバックナンバー, 技術者の上司とは, 技術者の自主性と実行力を育むために, 技術者人材育成, 生産性向上, 要素技術醸成
国際的な競争にさらされている上、昨今のCOVID-19の感染拡大もあり苦境にあえぐ企業が増えている昨今。
結果を急ぎたいという焦る心理状態に陥っている技術者が増えていると感じています。
当然ながらスピード感をもって進めなくてはいけない仕事もありますが、
すべてにその考えを当てはめるのは危険です。
今日のコラムでは技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 するということのリスクと、マネジメントの取るべき姿勢について考えてみたいと思います。
Photographed by Steve Johnson
技術的な仕事はスピードよりも技術的に抜け漏れを無くすことが重要
まず改めて認識しなくてはいけないのは、
「技術者というのは技術的理論と技術評価結果という絶対正義に基づき、着実に仕事をする」
ということです。
技術的な仕事が他の仕事と異なるのは
「技術的な理論や技術評価結果に基づく不変の事実が存在する」
ということです。
明確な理論と、想定した理論適用の妥当性検証について判断するにあたり、
技術評価結果という事実こそが技術の根幹であり、すべての出発点です。
技術者は常にこのことを基本として業務に取り組まないと、
「技術者としての強みと特権を自ら破棄している」
ということと同じになります。
どいういうことでしょうか。
スピードや効率が求められる業種は理論や検証の難しい業種
スピードや効率が大変重要といわれる業種として、
「企画や経営」
というものがあります。
当然企業規模による違いはありますが、
これらの業種はとにかくスピード感がすべてです。
何故かというと、
「基本的に企画や経営には確たる理論は無く、前進しか行ったことの妥当性を判断できない」
ということにあります。
世の中には企画や経営に関する様々な理論と呼ばれる情報が出回っていますが、結局それらはその本や情報を書いた筆者にとっての成功、またはそのように考えているものであり、国や業種という状況はもちろん、時代などによっても正解というものがめまぐるしく変化します。
そのため、合っているかどうかは別として、
「トライをするしかない」
ということになります。
この時のスピード感は一般的な社員から見ると異次元の世界で勝負するしかありません。
例えば経営を例にすると、損失が出そう、または出始めているという事業に対し、
撤退という判断をする場合、一刻一秒を争うスピード感で行わないと、
事業ごと倒れてしまうことも珍しくありません。
特に潤沢な内部留保等の余剰資金を抱えていない中小企業では、
この辺りの感覚を研ぎ澄ます必要があるでしょう。
技術者がスピード感や効率だけを求めるということは、企画や経営といった、
「企業規模によってはスピード感を持っての実行と判断がすべてという業種と同じフィールド」
で勝負することになります。
不変の絶対的な正解ともいえる技術的な理論が存在するにもかかわらず、
それを無視してスピード重視で闘うというのはそういうことになるのです。
上記の通りスピード感や効率だけを求めるのは大変危険といえます。
技術者の強みである技術的な専門性、理論、評価結果を活用せず、無視してしまっているからです。
技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 する危険性
このような危うい効率重視の技術者の思考回路の一つが、
「技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 する」
ということです。
例えば、技術的な業務においていくつかの選択肢があり、それらを選ばなくてはいけない。
その際、効率を重視し、選択肢を減らすために
「 選択肢を排除する」
ということを行う技術者がいます。
もちろん、その選択肢を除外することを支持する、
明確な技術的理論や技術的評価結果が存在すればその判断は妥当です。
しかし、そのような技術的事実も、それを裏付ける技術的理論も存在しない状態で、
選択肢だけを外してしまうのです。
明確な理論か裏付けとなる技術評価結果が無い限り、
その外してしまった選択肢が求めたい正解である可能性は消えません。
マネジメントはこのような状態を回避しなくてはいけません。
その為には何が必要なのでしょうか。
マネジメントに求められるのは明確な技術的理論や技術評価結果を示させるというぶれない姿勢
マネジメントは技術者が選択肢を外した場合、
「何故その選択肢を外すのだ」
ということを問いかけてください。
そして、何故それを外していいのかについては
「技術的な理論を説明させる、もしくは技術的な評価結果を示させる」
ということを徹底することが重要です。
明確な技術的理論が無い場合は、
「技術評価計画」
を立案させ、その中身をよく吟味し、マネジメントが承認して技術評価を進める、
ということを技術者に指示する姿勢が求められます。
技術評価計画については、以下のコラムをご参照ください。
※ 若手技術者の暴走や立ち止まり回避に効果的な 技術評価計画
https://engineer-development.jp/column-2/evaluation-plan-for-effective-work
マネジメントは技術的な事実がわからない限り、
前に進まないという技術者としてのぶれない姿勢が必要です。
尚、上記のような技術評価計画の承認等は時間的なプレッシャーのかかる一般のマネジメントとは別に、
技術的な観点についてのみ客観的に述べる技術の専門家を別に置く場合があります。
北米では Chief Engineer と呼ばれるこのような人物を設定しますが、
日本においてもこれからの技術系企業では必要な取り組みだと思います。
いかがでしたでしょうか。
日本には急がば回れということわざがあります。
昨今の効率や生産性という言葉が前面にでている論調は危ういと感じています。
特に技術者は本来、技術的理論と技術的評価結果という事実に基づいて仕事をすべき職種であり、
このような職種に必要以上のスピード感を求めるのは不適切といえます。
スピードを上げればできるような仕事は、
これからますます新興国との競争にさらされ、
結局は価格競争に陥ります。
技術の本質は何か。
そのようなことを改めて考えることができれば、
技術的理論や技術評価結果という事実の無い技術者の取捨選択に危うさを覚えるはずです。
先の見えない今だからこそ、
このような本質に立ち返るという姿勢が重要だと思います。
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