技術者の イノベーション と 企画力 5:企画力鍛錬の課題と 企画の活用
公開日: 2019年4月22日 | 最終更新日: 2019年4月21日
Tags: イノベーションと企画力
前回の連載コラムでは、イノベーションの基礎となる企画力について、
その評価する側にも強い覚悟が求められるということを述べました。
では、実際にイノベーションにつなげる企画力を鍛錬するためには何をしたらいいのでしょうか、そして 企画の活用 はどのようにしたらいいのでしょうか。
技術者の イノベーション と企画力の連載コラムの最終回として、
どのような鍛錬が有効なのか、そしてどのように企画を活用するのか、
ということについて考えてみたいと思います。
「自己紹介」は企画力の有無が最も顕著に出る宝の課題
結論から言うと「自己紹介」こそが最も身近で、
有効な企画力を鍛錬する課題です。
難しい課題や、現実離れしたロールプレイングを行う必要はありません。
自己紹介をきちんとできる技術者は、
概ね企画力が高い傾向があります。
では企画力鍛錬の課題として自己紹介が最善である理由から説明していきたいと思います。
自己紹介について誰よりも多くの情報量を有するのは自分
企画力において重要なのは、
「多く散らばる情報の中から、何がその場で最も重要なのかを抽出する」
という作業です。
ここでのポイントは、
「どの情報を出すことが、その場で適しているのか」
ということです。
自己紹介というのは、それを行う場所や相手によって話す内容が変わります。
・技術者として入社したての際に同期入社の人物に対しての自己紹介
・就職面接するときの自己紹介
・プライベートにおける友達としての自己紹介
・講演やセミナーの登壇する場合に必要な自己紹介
早速考えてみましょう。
例えば、
・技術者として入社したての際に同期入社の人物に対しての自己紹介
についてです。
相手は誰でしょうか。
概ね同年代の人物です。
ということは、あまり気を遣わずに基本的にはフランクに話した方が良いということがわかります。
では、その相手が知りたいことは何でしょうか。
・どこの出身(土地)か
・どこの大学で、専門性は何か
・何故この会社に入ったのか
・この会社で何をしたいのか
・趣味は何か
といったことでしょう。
折角一緒の会社に入ったので、その会話のきっかけとなる出身はもちろん、
趣味などは聴きたいと思います。
合わせて、技術者としての入社なので専門性が何かは知りたいでしょう。
専門性を軸にした会話のきっかけがつかめるかもしれません。
会話のきっかけを作り、知ってもらうことで色々な人間関係を広めていきたい、
というのが自己紹介の目指すべき方向だ、というのが大きな方向性だと考えます。
恐らく、意識しているかしていないかは別として、
このようなことを考えられると、自己紹介は的確なものとなります。
その一方で、
・講演やセミナーの登壇する場合に必要な自己紹介
という場合はどうでしょうか。
技術者という専門家である以上、それなりの若手でも人前で話すことはあると思います。
この場合、自己紹介をする対象者は
「講演やセミナーの聴講者」
となります。
社内のセミナーであれば、先輩や後輩の技術者になりますし、
外部であれば他社の技術者になります。
一般的に社内であろうが外部であろうが、
聴講者から求められるのは以下のような内容でしょう。
・この講演やセミナーを通じ、何を知ってもらいたいのか
・知ってもらいたいことについて、どのような経験や実績があるのか
・その経験を担保する情報として、所属する企業や部署はどこなのか
登壇する以上、聴講者は時間を作って聴きに来ています。
その方々に対し何を知ってもらうべきかを最初に自己紹介の中に盛り込み、
それを担保するものとしてどのような経験や実績があるのかを周知するのがポイントになります。
このような登壇する場面で、趣味の話をしても意味がないのはお分かりいただけると思います。
自己紹介といっても実は場所により、相手により変えなくてはいけません。
そして自己紹介最大のポイントは、上述の通り
「自己紹介に必要な情報は誰よりもその当人が世界のだれよりも一番持っている」
ということです。
そして自己紹介をするときに相手と話す目的を意識しながら自己紹介をできるために必要なのは、
「誘導力」
です。
誘導力は企画力を構成する2大要素の一つであり、
その位置づけは創造力と同等であると述べました。
自己紹介が非常に長い人、
周りが知りたいと思う方向性からずれている方が皆様の周りのもいらっしゃるのではないでしょうか。
自己紹介で話が長くなる人は情報量が多い故、あれもこれも言おうとすると話が発散して話が長くなっています。
良く言われるのが結婚式の祝辞や朝礼などですね。
ここで話が長い人は基本的に誘導力に課題があるケースが殆どです。
よく定年後の還暦過ぎの方が地元で孤立するという話を聴きますが、
その根底にあるのは誘導力の欠落です。
地元での自己紹介に
「どこの会社に勤めていた」
「どのような仕事をしていた」
というのは、地元の方のほとんどの方にとっては興味のない話です。
それよりも、
「その人はどのような経緯で地元に住んでいるのか」
「どのような趣味があるのか」
という、
「共通の話題は何なのか」
を知りたいはずです。
どれだけ優れた創造力を持ち、斬新なアイデアがあっても、
それを的確に発信し、味方を増やす誘導力が無ければ表に出てこないでしょう。
このように誘導力というのは企画力を発揮し、イノベーションを具現化するために必須の要素であり、その誘導力の有無が最も顕著にでるのが自己紹介なのです。
当社がクライアント企業の技術者の企画力を評価する際は、
・ターゲット(顧客、市場)が強く意識されているか
・ターゲットが知りたいという方向で企画が立案されているか
・ターゲットが欲しいと思わせる情報を抽出して発信できているか
といった観点を特に注目しながら助言、提言するというのは、
上記のような企画力の中で特に誘導力を中心に指導する必要がある、
ということが背景にあります。
これは新人技術者に向けた新人研修だけでなく、
新規事業企画評価や既存事業の拡大を目的とした企画評価といった、
企業の売上、利益拡大に向けた企業サポートでも実際に行っています。
ここでのポイントは、このような指導を行いながらも必ず技術者の専門性に技術者として接するというアプローチが重要であり、一般職と同じようにアプローチしても技術者は素直に受け入れないということは追記しておきます。
イノベーションに向け企画をどのように活用するか
ここまでイノベーションには企画力が重要であり、
その企画力は創造力と誘導力によって構成されていると述べてきました。
最後にこのような企画力に生み出された「企画」をどのように活用するのか、
ということについて説明して技術者のイノベーションと企画力という連載を終えたいと思います。
企画そのもの最重要の役割。
それは、
「原点と方向性を見失わないための道しるべ」
ということです。
技術者が仮にイノベーションにつながるような企画を立案できたとしても、
その後の日々の業務に忙殺され、改めて何のためにこの仕事をしているのだろう、
ということを見失うケースが多くあるはずです。
このような状況に陥りそうになった時、
企画を再度見直すことで、
・今の仕事は何をターゲットに進めているのか
・乗り越えるべき技術的課題は何なのか
・最終的に行きつきたいゴールは何なのか
ということを再確認するのです。
このようにして企画を見直すことで、
方向性と、そもそもその業務が生まれた原点を再確認できるのです。
これを定期的行うことで、
現場の技術者が迷うことが減り、
モチベーションの維持に大きな役割を果たします。
技術者のイノベーションと企画力のまとめ
優れた技術でイノベーションを。
世界中の企業とそこに属する技術者が目指すそのゴールに行きつくためには、
・創造力に加えそれを周りに理解させるための誘導力を組み合わせた企画力
・技術者の強みを最大化した戦略を積極的に取り入れる
・生み出された企画により持続性を持たせる
・企画提案する技術者は強い熱意を、評価する側はリスクを負うという覚悟を持つ
ということが肝要である
今回の連載ではそのようなことをご理解いただければと思います。
イノベーションを目指すというのは簡単ですが、
それを具体的に現場に落とすにはどうしたらいいのか。
技術者を指導する側だけでなく、
指導される側も早い段階から理解すべきことです。
抽象的な議論から一刻も早く脱し、
技術者が輝く環境を整備しながら、
企業の生き残りをかける。
今の製造業の企業においてはこのようなぶれない姿勢が必要とされているに違いありません。
ご参考になれば幸いです。
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