技術者の イノベーション と 企画力 4: 企画力の現実

 

前回の連載コラムでは、イノベーションの基本となる企画力について、
技術者の自負する専門性のフィールドで業務推進する、
定量化と数式化を徹底するということの重要性について述べました。

 

技術者の イノベーション と 企画力 3: 技術者の企画力 とは

今日は技術者の「 企画力の現実 」ということについて述べてみたいと思います。

 

 

企画力はそれを発揮させることに加え、評価が難しい


どれだけイノベーションが大切だとわかっていても、
なかなかそれが技術者から出てこないのは何故でしょうか。


当然ながら技術者の企画に関し、提案の量と質が不十分ということもあるでしょう。


しかし、現場の状況を見ているとそれほど話は単純ではありません。

例えば、企画評価の場面で以下のような話を聴くことは無いでしょうか。

 

– それで成功した前例はあるのか


– 時間をかけすぎだ、早く結果を出せ

 

このようなロジックはどこからくるのかという質問の回答は意外と難しいのですが、すべてとは言わなくとも、その可能性の一つといえるのが、


「株主や融資元の銀行の意向が源流にある」


という現実です。


無借金で、株式も非公開、
そして創業者が健在の企業では、
上記のような外的な意向による影響はありません。


しかし、株主や融資する銀行が存在する場合、
経営者といえども自らの意思だけでなく、
それらの影響を強く受けます。

 

経営者の下に属する管理職の方々はより強くその意向を突き付けられるでしょう。

 

企業運営に「お金」という資本主義では絶対的な定量援助を得ている以上、
株主や融資銀行の意向を無視できないのはごく自然のことであり、
株主や銀行が上記のような話をするのも当然なのです。


ただ、このような流れは企画というものに対して、
極めて厳しい流れであり、
仮にいい企画が立案される、また企画力の高い人物が居ても、
なかなか評価されることは無いでしょう。


まさに今の日本企業、または世界の大手企業の抱えるジレンマといえます。

 

つまり、


「企画力は外的要因によって、評価が厳しくなるという傾向がある」


ということになります。

 

 

良くある企画評価の裏側


先程述べた、


– それで成功した前例はあるのか


– 時間をかけすぎだ、早く結果を出せ


という良くある、株主や融資銀行のコメントを「株主と銀行の意見と企画力という観点」の両面から見ていきましょう。

 

 

– それで成功した前例はあるのか

 

A. 株主と銀行の意見
株主としては株価が上がり、定期的に配当をつけてもらうことで、
株券という価値に対して利ザヤを求め、さらにそれを高い金額で売って、
売却益を得たい。
(もちろん、株主の本来の趣旨である、企業倫理に同調して資金を提供するという株主の方も居ます)

銀行としては、融資したお金が回収できない、つまり焦げ付いては大変です。
そのため、リスクを低減するにはどうしたらいいかを先に考え、
前例、特に成功事例を求める傾向があります。


B. 企画力という観点
当たり前のことですが、イノベーションを目指す企画に前例があるわけがありません。
前例が無いからこそチャンスがあるのです。
それこそがイノベーションの基本です。

 

 

– 時間をかけすぎだ、早く結果を出せ

A. 株主と銀行の意見
株主としては早く投資した以上の金額を得たいという熱意があります。
株という価値は日々変化してしまうため、株価がじり貧になっては大変です。
そのためには、定期的に売り上げと利益という成果を出し、
企業価値を高めてもらわなくてはなりません。ゆっくり構えるわけにはいかないのです。

銀行としては、利益と売上につながらない融資はお金をどぶに捨てるという印象さえあるようです。
どれだけきれいごとを言っても、企業は売り上げと利益が出ない限り存続できない。
存続できないと融資したお金が焦げ付くので、それは何としても回避したい。
だからこそ、早く結果を出してほしいと思うのは当然です。


B. 企画力という観点
世の中には色々なことを考える人がいます。
自分がパッと思いつくことのほとんどは既に誰かが考えていること。

もちろん稀に自らのアイデアに前例が無い場合もあります。

そのようなばくちを当てるのも企画では大切ですが、その一方で、

 

「長い時間をかけて技術データや検証を蓄積しないとできない」

 

ということは、一般的に忍耐が必要であるため、競合が減る傾向があります。

他の企業も短時間で売り上げや利益につながる成果が欲しいからです。
よって期間を圧縮して急ぐということをやるよりは、
ある程度ゆとりをもってじっくり取り組み、
技術の原理原則である「本質」をきちんと見極める、構築する、
といった取り組みこそ企画の価値があります。

結果としてこのような本質をとらえたテーマが、
長い時間にわたって売り上げと利益を支える事業へと成長する可能性が高まります。

 

ただし、無期限でだらだらと進めるというのは許容されず、
ある程度の時間軸を決めて進めるのが重要であることは付け加えておきます。

 

 

企画力を評価する側に求められる考え方

 

株主や銀行からの意向を源流とする上記のような評価思考は、
銀行や株主と無関係の企業経営者を除き、不可避といえます。


それでも、雇用する技術者を鼓舞してイノベーションを実現し、
企業を成長路線に乗せたいのはほぼ全世界の企業経営者や管理職の望みだと思います。

 

これまで、技術者がイノベーションを起こすために必要なことを、
技術者側の目線で多く述べてきました。


ここでは、その技術者が力を発揮する環境を準備する、
経営者、管理職に必要なことを述べたいと思います。

 

それは、2つあります。

 

1つは、


「イノベーションを実現する企画には、リスクは不可避である」


という「覚悟」です。

 

イノベーションは基本的に前例が無いものを目指すうえ、
投資がある程度必要になるため、
株主や融資する銀行から厳しい目を向けられます。

 

しかし、そのような方々は資金を提供している以上、味方につけなくてはいけません。その方がに対して丁寧な説明を行い、


「リスクを負って前に進む必要がある」


という覚悟を示して納得してもらうことが、
結果的に現場にいる技術者が伸び伸びとイノベーションに向け、
業務を取り組める環境の重要な要素となるのです。


上層からくるプレッシャーに負けず、
リスクをとるという覚悟は、
現場の技術者を鼓舞することでしょう。

 

そのくらい、現場の技術者は上(経営者・管理職)をよく見ています。

 

企画力を有する優秀な技術者が他社に行ってしまうことを防ぐためにも、
評価する側もリスクをとる覚悟を示してあげてください。

 

 

もう一つが、

 

「やり切るという熱意を徹底的に確認する」

 

ということです。

 


現場の「熱意」が最優先であるということは、
以下のコラムでも述べました。

 

技術者のイノベーションと 企画力2: 企画力 発揮のための3大要素

 

経営者や管理職が上記のようなリスクをとるという覚悟を決めた以上、
現場の技術者も中途半端な姿勢は許されず、


「何としてもやり抜くという熱意」


は絶対条件です。


うまくいかなくても誰かが何とかしてくれるだろう、
という他力本願な部分が少しでもあると命とりです。

 

未知の領域を進まなくてはいけない企画を具現化し、 イノベーション につなげるには、未知の世界に踏み出す勇気と、その孤独感に耐えられる忍耐力、そしてやり抜くという当事者意識が必須です。

 


そのため経営者や管理職の方々が企画評価を行う場合、


「本当にそれをやり切る熱意はあるのか」


ということを徹底的に確認してください。


ここに対する評価はシビアで良いと思います。少しでもやりぬことに不安を示したのであれば、その企画は突き返すべきです。


先の読めない企画について、
売上や利益といったことの金銭的な「精度」を求めるのは合理的ではありません。


もちろん現場の技術者は売上、利益の見込みは示す必要があり、
その概要について確認と評価が重要であることに疑いの余地はありませんが、
株主や銀行が聴きたくなるような部分について経営者や管理職は細部まで追及してはいけません。


それよりも、現場の技術者の熱意を確認するということがずっと重要なのです。

 

 

 

 

今日は技術者のイノベーションに向けた企画力ということについて、
その現実と、企画を評価する経営者、管理職の方々にも求められる覚悟について述べました。

 


技術者の人材育成においては、
技術者自身も経営者の心理や状況を理解するという観点を取り入れることが重要になりつつあります。


しかしそれは株主や銀行の意向をそのまま伝えるということではないのです。


伝えるべきは、


「株主や融資元の銀行からの逆風の中でも、イノベーションのためにリスクをとるという覚悟をしている」


という姿勢です。


これこそが、今回ご紹介した技術者の企画評価に対して有効なのはもちろん、
技術者が自らの業務に対して当事者意識を持たせる、
という技術者人材育成の基本へとつながるのです。


イノベーションのためには、
経営者や管理職も覚悟を決める必要がある。


本点をご理解いただければと思います。

 

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