技術者の イノベーション と 企画力 3: 技術者の企画力 とは
公開日: 2019年4月10日 | 最終更新日: 2019年4月10日
Tags: イノベーションと企画力
前回の連載コラムでは、イノベーションの基本となる企画力が発揮される3大要素について説明しました。。
技術者のイノベーションと 企画力2: 企画力 発揮のための3大要素
今日は 技術者の企画力 ということについて考えてみます。
技術者になる前の高等教育
日本の高等教育は
「理系と文系を分ける」
という世界的にみるとやや特殊です。
理系上がりの技術者は、
色々な特性があり、人材育成もやりにくい。
そんな話が上がるのも教育である程度分けているところに遠因があるかもしれません。
世界的には理系と文系は分けていないため、
日本もそうすべきだという意見もあるようですが、
世界のやり方を参考にすることがあっても追従するのは違うと考えています。
日本は日本の強みややり方があり、
世界の情報をアンテナを張って情報をキャッチするのはもちろんですが、より大切なのは、
「自らが基準となるように情報発信する」
ということでしょう。他を真似すればいい時代ではないことは恐らく多くの方が気が付いていることだと思います。
話を戻しますが、上記の通り日本企業の技術者は一般的に理系としての教育を受けます。
現在の日本の高等教育(大学)の基本は、
「必要な専門知識を習得した上で、研究テーマに取り組む」
ということです。
根幹にあるのは、
「学術業界に新規性のある原理原則や発見を提示し、当該業界の発展に貢献すると同時、その実績と名声を得る」
という大学としての使命感です。
色々な意見があるかと思いますが、
当社としてこの教育方針は良いと思っています。
民間企業向けの技術者を養成するため、または成果を焦りすぎる故に、
応用研究ばかりに取り組み、
要素技術研究をおろそかにするようでは技術全体が必ずジリ貧になります。
本質を突き止めようとするその熱意こそ、
技術者としての本質を高めるものである、
ということは、民間企業の技術者にとって何より大切な事でしょう。
言い換えると企画力のうち、新しいものを生み出すという
「創造力」
にはできるできないは別として、技術者はこだわりを示す傾向があります。
実際に理系学生である方々がどこまでこれを意識しているかは別として、
このような教育を経て技術者になっているということをまずご理解ください。
技術者は営業や企画部隊と同じフィールドで戦わない
上記のような教育を受けているのが一般的な技術者であるため、
ビジネスに対する感覚は教育を通じてはみにつきません。
そのため、
「市場のニーズやシーズはもちろん、目の前の顧客さえ目に入らない」
という技術者が多いかもしれません。
マネジメント層からは、
「技術者は自分自身がやりたいことをやるという自己満足に終始しているように見える」
という意見が出ることもあるのではないでしょうか。
専門性至上主義の技術者は、
「自分のやっていることは新規性があり、これによって自分が成長できる」
と実感できたものに対して執念を燃やす傾向があるため、
上記のように映るのはある意味致し方ない部分もあります。
その一方で、一般的には文系から営業や企画部門に配属されるような方々は、
「相手の懐に入り込みながら人脈を広げ、市場動向やニーズを把握する」
ということが必要不可欠、または自然の形でできる方が多い傾向があります。
やはり大きいのは、
「専門性というものについて必要以上の執着がない」
ということです。
文系の方は、専門性よりも人脈等のネットワークやそれによって入ってくる情報が重要である、と考える傾向があると感じます。
このようにみてくると、営業・企画部隊の方々と技術者の間には、
スタートラインの状態から圧倒的に違っており、
当然ながら技術者は企画力を構成する2つの力のうち、
「誘導力」
というものについてそのスキルが欠落しているケースが多々あります。
こう聞くと、営業・企画部隊に配属させ、
そのスキルを学ばせるべきだ、
と考えるかもしれません。
しかしながら、それでは
「技術者が本来持っている強みを抑圧してしまう」
ということに気が付く必要があるでしょう。
教育の段階で
「新規性」
を求められ続けた技術者は、その重要性を十二分に理解し、モチベーションを高めるすべを知っています。
しかし、自らの仕事やテーマを客観的にみてそれをわかりやすく説明する
「誘導力」
については教育段階で教わることはほぼ皆無です。
それにもかかわらず誘導力を求められる部署に入れられると、
中には前向きに誘導力をみにつけようと考える技術者もいますが、
多くの技術者は、
「自分の専門性を生かして新規なものを生み出す仕事ができない」
という不満を抱き、大きくモチベーションを低下させると思います。
つまり、技術者を無理に営業や企画の部門に押し込むことは、
必ずしも正解とは言えないのです。
技術者の企画力は技術者としての強みを前面に出すことで力を発揮する
では、どのようにすれば技術者の企画力を醸成すればいいのでしょうか。
一言で言えば、
「技術者の強みを全面に出す」
ということです。
より具体的に2点ほどご紹介します。
技術者の強みを前面に出す1:技術者の専門性をフィールドとする
最も重要なこと、それは、
「技術者が自負する専門に関するフィールドをベースにする」
ということです。
技術者は積み上げてきた専門性を失うこと、
もしくは知らないフィールドに放り込まれることを恐れる傾向があります。
それは柔軟性の不足という観点で改善すべきところですが、
前述した教育を受けている以上、やはり専門性という呪縛から技術者は逃れられないのです。
そこで、この専門性に対する執着を利用するという思考の転換が必要になります。
その第一歩はその技術者が有する専門分野を基本に、
企画力の醸成を行うということになります。
これにより、3つの効果が期待されます。
一つは、技術者のモチベーションアップです。
自らの専門性に関わることであれば、積極的に取り組むはずです。
業務におけるモチベーションアップは様々な業務で重要になりますので、
ここは大きいでしょう。
もう一つは、類似した専門性を有する技術者とのネットワーク構築です。
類似した専門性を持つ技術者は、当事者同士で共感する傾向があります。
このようなネットワークを通じて入ってくる情報には貴重な市場のニーズや、シーズのヒントになるものもあるかもしれません。
そして、これが最も重要ですが、専門性に関するフィールドで企画力を醸成することにより、
「その専門性に関連する課題を抱える顧客とマッチングする」
ということにつながるのです。
より具体的なやり方としては情報発信型マーケティングを基本としますが、
このような効果が見込めるという意味でも、
技術者の専門性をフィールドと設定した上での企画力醸成が効果的といえます。
※上記の研修やサポートの概要については以下のページをご覧ください。
技術者の強みを前面に出す2:定量化と数式化の徹底
次に重要な事。
それは、
「定量化と数値化を徹底する」
ということです。
技術者にとっての誘導力の基本となるものの一つとして、
「定量化能力と数式化能力」
があります。
誘導力が大きく伸びる技術者の多くは、
この両方のスキルが高い傾向があります。
グローバルな言語として「英語」が挙げられますが、
それとは異次元にグローバルなのが
「ローマ数字と数学」
です。
技術者はもちろん、研究者の世界でもローマ数字と数学は、
ほぼ完ぺきなグローバル言語です。
この数字を多用する定量化能力と、
それをシンプルに数式で示す数式化能力は、
技術者が高等教育で徹底的に叩き込まれるものの一つであり、
これを使うことで日本だけでなく世界中の技術者と同じ言語で語り合うことができるようになるのです。
結果的に「技術者の専門性をフィールドとする」で述べたように、
ネットワーク構築と顧客ニーズ把握につなげることが可能となります。
技術者の本質は基本的に世界共通です。
この辺りは以下のコラムでも述べたことがありますので合わせてご覧ください。
いかがでしたでしょうか。
イノベーションにつなげるための技術者にとっての企画力は、
営業・企画部門とはまた違った切り口で醸成する必要がある、
ということがお分かりになったと思います。
理系と文系を分けるという教育体系により、
専門性と新規性にこだわりを持つ技術者を育てるには、
その本質的な部分に働きかけることが、
結果的に企画力醸成の近道となるのです。
各社の技術者育成教育のご参考になれば幸いです。
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