若手技術者の 技術情報収集力 を高めるために、何をやらせるべきか Vol.120
公開日: 2020年8月31日 | 最終更新日: 2020年8月31日
Tags: メールマガジンバックナンバー, 技術コミュニケーション, 技術情報発信型マーケティング, 技術者人材育成
[ Photo by ThisIsEngineering / Harry Parvin ]
インターネットなどの情報媒体の多様化により、
様々な情報が比較的容易に取れるようになる時代となりました。
その気軽さゆえに、技術情報の質は玉石混交であるため、
技術の本質を意識しながら情報を収集する必要があることには注意が必要です。
この辺りは以下のコラムでも述べたことがあります。
※ 技術の基礎知見 を高めるための調査をどのようにやらせればいいかわからない
※ 若手技術者に 最新技術 を触れる機会をどのように作ればいいのかがわからない
このようなことを意識するにしても、
まずは技術情報収集をするというアクションを、
若手技術者にとっての一種のルーチンにすることがスタートラインといえます。
視線が自分基軸になりがちな技術者
技術者は自分の専門性にこだわりを見せる傾向にあるため、
一般的に視線は自分基軸になりがちです。
自分の知識が不足しているので勉強しなくてはいけない等、
自分の業務推進にあたって、必要不可欠ともいえる技術知見を習得する方向に意識が向く、
というのは自分基軸視線の代表例です。
技術知見習得を目的に調べるというのは、
技術者の基本業務として大変重要であり、
技術者がここに時間を割くというのは基本といえます。
ただ、技術者がさらに一歩視点を広げる、または高くするためには、
「自分基軸ではなく、技術の本質軸で技術情報を調べる」
という考えが必要になります。
技術の本質軸で技術情報を調べるとは
技術の本質軸で技術情報を調べる、
というものはどのようなことを意味しているのでしょうか。
大きく分けて2点あります。
1. 現行の技術理論が生まれ、それがどのように発展してきたか技術の歴史を理解する
2. 技術が具体的に市場でどのように使われているのかを理解する
それぞれについて説明します。
技術の発祥と変化の歴史を理解し、技術の本質を見極める
今の様々な最新技術は必ず発祥と変化という歴史を踏んでいます。
技術が誕生したときはどうであったか、
そしてそれがどのように変化し、今に至るのか。
それを理解することは、
「技術の中で不変の本質を見極める」
ということにつながります。
例えば指数という数学理論が何故生まれたのか即答できる方はいらっしゃるでしょうか。
指数という物が生まれたのは、
「非常に大きな数字を身近な数字に置き換え扱いやすくするため」
というのがその答えになります。
このように各技術には最初に誕生した時の動機というものがきちんとあり、
その理論は年月を経ても基本的には変わりません。
この変わらない不変の部分を理解することが、
その技術の「本質」を理解するということの第一歩になるのです。
本質が何かを理解することは、
実際にその技術を応用し様々な新しい技術を開発する際のよりどころとなるのです。
何故ならばそれが技術の原点回帰だからです。
技術の研究開発で迷った時に必要なのは原点回帰です。
本質を理解しておくことは、
結果的に若手技術者に原点回帰という研究開発業務に不可欠な選択肢を与えることにもつながるのです。
技術が市場でどのように応用されているのかを理解し、市場ニーズ/シーズを把握する
技術者は技術の本質を突き詰めるという基本姿勢を忘れてはいけません。
しかし、それと同時に民間企業に雇用されている技術者が理解すべきは、
「技術を基本とした製品やサービスがどのように使われているのか」
ということです。
これを理解することは「市場ニーズ/シーズ」の理解と同等です。
ここを把握しておかないと技術が独りよがりになり、
そもそも市場から何を求められているのかを見失うことになります。
技術情報の収集習慣をつけるには情報発信が最も効果的
では実際に 情報収集力 を鍛錬するため、
上記2点を意識して技術情報の調査を行おうという際に恐らく問題となるのは、
「技術情報を収集するという習慣がない」
ということです。
どれだけ技術情報を収集して理解する必要性がわかっても、
そもそも技術者が情報を収集するという行動を起こさなくては意味がありません。
「技術情報を調べろといっても、言われたときはやってもすぐにやめてしまう」
というのが一般的な流れです。
このような時に、情報収集の習慣化に向け効果があるのが、
「社内外に技術情報を発信させる」
というアウトプットを課すことです。
技術情報発信というのは、実際に発信する情報はもちろん、
それに関連する技術情報を理解しなくてはいけないことに加え、
「発信する以上、その技術情報の裏付けを取らなければならない」
という縛りが生じます。
この縛り故、技術者は強制的に調べざる負えない状況に置かれるのです。
そして技術情報発信が習慣になることは、
結果的に「技術情報発信型マーケティング」という、
技術者にしかできないマーケティング力をつけることになります。
この辺りは以下のコラムでも述べたことがありますので、
そちらも合わせてご覧ください。
技術情報収集力 を上げさせたいのであれば、
先に技術情報を発信するということを習慣化させる。
これこそが、技術者の技術情報収集力の向上に直結する取組みといえます。
COVID-19等で従来型の人のつながりの維持や発展が難しくなっている昨今。
このような正当化されつつある分断を乗り越えるのに必要な力は、
「技術情報の発信力」
です。
技術情報は情報発信戦略の鍵となるのです。
技術情報収集力の向上はもちろんですが、
そもそも技術情報発信力の高い技術者を育成することで情報収集を習慣化させるということが、
技術者を抱える企業にこれから求められる「サバイバル力」につながっていくに違いありません。
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