若手技術者に 最新技術 を触れる機会をどのように作ればいいのかがわからない Vol.090
公開日: 2019年7月9日 | 最終更新日: 2019年7月8日
タグ: OJTの注意点, メールマガジンバックナンバー, 技術者人材育成
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技術者を指導する方へおくる
「若手技術者人材育成の悩み解決メールマガジン」Vol.090 2019/7/8
(隔週月曜日発行)
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<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・今週の「製造業の若手技術者育成ワンポイントアドバイス」
・編集後記
<今週の「製造業若手技術者育成ワンポイントアドバイス」> ━━━━━━━━━━━━━━━━
– 若手技術者に 最新技術 を触れる機会をどのように作ればいいのかがわからない
という悩みについて考えてみます。
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今日のワンポイントは、
「若手技術者に最新技術を触れる機会をどのように作ればいいのかがわからない」
という時には、
「若手技術者に機関紙の記事や論文を抜粋させ、読み合わせる時間を月に1回作る」
という徹底をさせてください。
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どのような業種であったとしても、
技術者にとって重要なのは、
「 最新技術 に触れ続け、情報を更新し続ける」
という継続スキルです。
これはどの年齢になっても重要なことですが、
特に年齢を重ねてから技術情報の更新ができるか否かは、
若い時にこの継続スキルをみにつけられたか、
という点が大きなウェイトを占めます。
そのため、若手技術者には早い段階で、
最新技術を常に調べ続けるということをルーチンにさせる取り組みが重要です。
このようなことを狙うにあたって高い精度で効果があるのが、
「若手技術者に機関紙の記事や論文を抜粋させ、読み合わせる時間を月に1、2回作る」
ということです。
ポイントは以下の通りです。
– 読み合わせ対象は機関紙の記事や論文といった、紙媒体になっているものを選択する
(実際の情報の取得はオンラインで問題ありませんが、結果的に紙媒体になっているものを選ぶようにしてください)
– 調査は若手技術者にやらせる
– 読み合わせの頻度は月に1回(多くても2回)程度にする
それぞれの背景ですが、
まず紙媒体になっているものを選択する理由としては、
オンライン上の情報が玉石混交であることが背景にあります。
※参照コラム: 若手技術者に技術の本質を理解させるための具体的なアプローチがわからない
技術者たちの貴重な時間をかけて調査や読み合わせを行う以上、
技術的に妥当、もしくは正確な情報であることが最低条件です。
紙媒体になっているものは、
多かれ少なかれ他の専門家による校閲や審査、
または出版社による企画承認という、
何らかの形で複数の人によるチェックが入っています。
適当なことを書いていては紙媒体にはさせてもらえないのです。
特に技術的な内容のものについては、
機関紙の記事であればその業界について何かしら知っている出版社の編集者が、
事前に調査する、または企画の審査を行っています。
場合によっては他の専門家にその妥当性を確認することもあります。
論文については言うまでも無く、
査読付きのものであれば複数人の専門家による審査を通過しないと掲載されません。
この審査を行う人間はレフェリーと呼ばれます。
最近はきちんとした査読も無く掲載されてしまう論文も国内外で存在しますが、
昔から存在するいわゆる有名な論文のほぼすべてにおいて、
査読制度があります。
このような背景を踏まえ、
読み合わせにはそれなりに歴史や実績があり、
紙媒体になっている機関紙や論文を題材にすることを推奨しています。
また、読み合わせをする題材を若手技術者に行わせる理由は、
彼ら、彼女らにその作業をルーチンにしてもらうためです。
自らが選んだ題材ということは少なからず若手技術者にとっても興味があることのはずです。
読み合わせをするということは、
先輩や上司に内容の説明をできなくてはいけないので、
内容を理解しなくてはいけません。
つまり当事者意識を芽生えさせることにつながるのです。
このような作業を踏まえ、最新の記事や論文に掲載される情報を理解するのは、
結果的に外の技術情報に触れ、また個々人の持っている技術情報を更新していくことになります。
読み合わせの頻度を月に1回程度にするのは、
読み合わせのシステムを継続させること、
そして若手技術者への調査や理解の時間を持たせることが狙いです。
多くの企業において若手技術者は余裕がありません。
これは経験不足であることはもちろん、
採用されている時点で人手が足りないことがその背景にあるためです。
つまり、やらなくてはいけない不慣れなことが多いのです。
その上で上記のようなシステムを例えば毎週やるとなってしまうと、
若手技術者の余裕がなくなり、
目の前の仕事ができなくなってしまいます。
これでは本末転倒です。
目の前の業務をきちんとこなすのは若手技術者の最重要事項です。
この読み合わせのやり方について具体的な方法の解説を行って、
今日のメールマガジンをしめたいと思います。
まず出席者は若手技術者、その先輩、さらには上司まで含めてください。
時間は1.5~2時間程度(終わりの時間は決めた方が良いと思います)。
技術的議論を深めるためには、
このくらいの時間が妥当なケースが殆どです。
まずは若手技術者が調べた元となる記事や論文を紙媒体で出席者に配ります。
その上で、Powerpoint等のスライドを用いながら、
「A4サイズ1ページで要点を先に説明する」
となります。
1ページにまとめるのが重要です。
基本的には技術報告書と同様、
1. 記事や論文を選択した背景(何故、若手技術者がこれを選んだのかを説明)
2. 記事や論文の目的(ここでいう目的は筆者の目的)
3. 記事や論文の結論(ここでいう結論は筆者の述べている結論)
4. 記事や論文の概要
という4部構成です。
Powerpointの場合、フォントはせいぜい 14 pt 程度まで。
それ以上小さいのは見にくくなり、また情報量が過剰になります。
基本的には合っている、間違っているではなく、
この1枚にまとめさせるということが極めて重要です。
これができると、技術者にとって最重要の
「論理的思考力」
が醸成されます。
いろいろ言いたい中で何が書かれているのか、
ということを「抜粋する」という作業は、
技術者の最も苦手とするところであり、
ここを鍛錬することで技術者としての業務推進力が高まります。
より具体的には、しゃべること、聴くことの力が高まり、
コミュニケーション力が上がり、
チーム間の連携も高めることが可能となります。
さらには様々な情報を俯瞰してみることができるようになり、
いわゆる「企画力」も上がるのです。
※参照:技術者の イノベーション と 企画力 1:企画力とその盲点
そして、この読み合わせをさらに効果的にするのが、
「そういう情報であれば、ここを調べると良い、これを読むと良い」
という経験が豊富な上司が提案してあげることです。
これにより若手技術者の得らえる技術情報に幅が出てきます。
さらには上司が、
「その技術的意味はどういうことなのか」
といった質問を多く投げかけてあげてください。
これにより、調べていれば答えられる、
答えられないことは後で回答する、
といった技術者が企業に勤めるうえで大切な、
「わからないことは一度持ち帰って調べる」
ということができるようになります。
知っていることこそ正義という「専門性至上主義」から脱するいい機会にもなるのです。
いかがでしたでしょうか。
技術者にとって大切なのは若いころに情報の更新を徹底するというルーチンを覚えることです。
これができないと加齢に伴い、
経験値や理想論でしか話をしない、評論技術者になってしまいます。
ずば抜けた経験値があれば別ですが、
年齢を重ねると管理職の仕事もやる必要のある現代の組織において、
そこまで自らを高めるのはかなり難しいと考えます。
このような状態を避けるために重要なのは、
若いうちに外の情報を取り続けるという積極性です。
このようなスキルを鍛錬する方法として、
今回ご紹介したような技術記事や論文の読み合わせを是非ご活用ください。
<編集後記> ━━━━━━━━━━━━━━━━
先日は埼玉県産業技術振興公社が主催する、
画像認識、AIの技術に関する産学連携技術シーズ発表会に参加しました。
非常に興味深い企画だったためか、
広い会場は満席でした。
多かったのは企画に沿ったということで、画像認識とAIを組み合わせた技術の発表。
画像のパターンをAIに学習させ、
様々な判断をさせる、ということでした。
私の過去の顧問先でもこのAIを取り入れた新規技術の研究開発をやっていましたが、
実はAIにも課題が多いことはあまり語られません。
私が理解している最大の課題は、
「どのようにしてその回答が得られたのかという経緯が不明確」
ということです(他にも課題はありますがまずはここでしょう)。
アルゴリズムの関係上、AIの判断経緯を人が理解するのは難しいようですね。
仮にAIでベストな解が得られたとしても、
その理由がわからなければそれは本当の技術にはならないと、
私は考えています。
ベストな解の算出経緯がわからないと応用範囲が狭く、
また、問題が起こった時にその原因究明が困難になるためです。
そういう意味ではAIを有効に使うためにも、
流行りに乗っかるだけでなく、
やはり技術者であればきちんと技術的に考えるという基本に立ち返ることが重要だと思います。
そんなことを考えながらその日の夜は、
一緒にJazzライブをやった音楽のメンバーとの楽しい夕食会でした。
結局のところ、対極にあるアナログの息抜きも大切だな、
ということを感じてしまう一日でした。
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