生産性向上を目指した 工程変更推進 において、若手技術者に何をやらせるべきか
公開日: 2020年8月17日 | 最終更新日: 2024年9月12日
Tags: OJTの注意点, メールマガジンバックナンバー, 技術者人材育成, 生産・量産, 生産性向上
製造業における生産・製造現場の生産性向上は最重要命題の一つとも言えます。
そしてこのような取り組みにおいてよく行われるものの一つに、 工程変更推進 があります。
企業として潤沢な資金と人があれば、
アウトソースや新規技術導入ということによって、
生産性向上という目標に向かって前進することも可能です。
ただ多くの中小企業においてそのようなアプローチは難しく、
「社内で議論を重ねながら、社内の設備や人を使って少しずつ進めていく」
ということが一般的だと考えます。
生産性向上に向けた取り組みにおける若手技術者の役割
上記のアプローチを進めるにあたりマネジメントとして、
若手技術者にどのような役割を担ってもらうのが最適か、
ということを熟考することが求められます。
一般的には若手技術者は現場で仕事を覚えろ、
という観点から現場作業に精を出してもらうということになるかと思います。
当然ながら生産・製造現場における若手の技術者にとって最重要なのは、
現場の作業を覚えてもらい、安定的に高品質のものを生み出してもらうことです。
しかし、これだけだと生産・製造現場の技術者は、
言われたことをやるだけの作業者になってしまいます。
継続した工程改善を行うにあたっては、
「生産・製造現場の技術者も、自ら課題を見つけ、それを解決できるように行動する」
ということが極めて重要です。
特に教育をしなくともそのように成長する技術者はもちろんいますが、
マネジメントとしてはより積極的、かつより能動的にそのような技術者を生み出すよう、
働きかけていくことが求められます。
上記の観点を踏まえた場合、生産工程改善業務で若手技術者に求められる業務は、
「改善を目指した工程変更に至る議論を記録する議事録をきちんと書かせる」
ということになります。
その背景にあるのは何でしょうか。
生産・製造現場における工程変更に関する記録の与える効果
製造現場というのは基本的には時間的余裕はありません。
そのため、例えば改善を目的に工程変更を行った場合、
中小企業の多くは、現場の判断で対応が進められることが殆どです。
当然、その時は実際に改善作業を行った技術者やその周りの技術者は、
どのような議論があり、具体的にどのような工程変更が行われたのかという具体的な経緯を理解しています。
しかし時間の経過に伴いその記憶はあいまいとなり、
また百戦錬磨の生産・製造現場の技術者の引退等が重なると、
以前行って失敗した改善への取り組みが繰り返される、
といった非効率な事象が発生します。
これらの事象の根底にあるのは、
「工程変更に関する記録不在」
です。
・工程変更としてどのような取り組みが行われたか
・工程変更が必要と考えられた背景は何か
・工程変更が行われるまでの間、どのような議論が行われたか
・工程変更の妥当性を検証するため、どのような技術評価を行ったか、そしてその結果は何か
上記のような記録があれば、
同じような取り組みの効率が上がることに加え、
不必要な工程変更を回避できます。
そして何より、
「生産・製造現場の技術者はどのようなことを常日頃考えなくてはいけないのか」
ということを学ぶ教材になります。
しかし多くの中小企業においてこのような記録が残っていることは少なく、
結果として現場の技術者は作業者へと変化してしまう結果、
昨今のような変化の激しい時代のスピードについていけず、
業績がじり貧になるという悪循環に陥ります。
工程変更に関する議論の記録についての要点
では、具体的にどのような記録があればいいのでしょうか。
重要な記録は以下の3つです。
それぞれについて網羅されるべき主な要点を述べています。
1. 議事録
・打ち合わせ日時、出席者
・打ち合わせの背景
・打ち合わせ結果
・決定事項
・今後の展開
2. 技術評価計画
・技術評価の背景
・技術評価の目的
・得たいアウトプット
・技術評価のマトリックス表
・技術評価概要
・評価計画概要
3. 技術報告書
・技術評価計画に基づいて行った評価の結果
・工程変更を行ったことによって得られた結果、知見
上記のような3種類の記録kがセットとして揃っていれば、
議論の経緯、工程変更の妥当性を検証した技術評価内容と結果がわかるようになります。
この手の書類作成は非常に負荷のかかる作業となるため、
特に生産・製造工程では回避される傾向があります。
しかしながら結局のところこのような記録の不在によって、
多くの非効率な業務が後になって発生すること、
そして多くの知見を伝承する効果的なツールであること、
何より現場の技術者が能動的に考え、動くという文化を醸成する効果を考えれば、
是非とも取り組むべきことだと考えます。
またこのような書類は若いうちに鍛錬することが重要です。
若いうちにこのような様々な記録を残す鍛錬を積んでおくと、
中堅に差し掛かった頃にはそれほど苦労せずに作成できるようになります。
逆に若いうちにこの手の業務を回避する、または回避させてしまうと、
年齢を重ねてからではなかなかそのスキルは向上せず、
活字を基本とした工程変更を記録するという文化を醸成することはできません。
そのため、マネジメントは早い段階で若手技術者の中から、
このような文章を作成できる人材を選定し、
上述の書類を作成する力をつけさせることが重要といえます。
効率が最優先の生産・製造現場。
時間的に厳しい環境において、
あえて他社が取り組めていない記録を残すという業務を推進することは、
結果的には自社の優位性を発現する一つの手段となっていきます。
言われたことをやる、というだけの作業者に終わらせず、
能動的に現場での課題を見つけ、その解決に向かって行動できる技術者を増やすということが、
今のような不安定な世の中で企業が生き残り、そして成長するために必須の姿勢だといえます。
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