財政運営の基本方針2022に対する技術者育成からの考察

公開日: 2022年6月4日 | 最終更新日: 2024年11月19日

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経済財政運営と改革の基本方針と技術者育成の関係とは

 

 

 

経済財政運営と改革の基本方針2022が発表となりました。

 

経済財政諮問会議で示された骨子案であり、今後の日本が何を目指すのかという指標にもなる部分です。

 

よって、日本国民を中心とした日本に住む方々全員に関わる話ですので、概要は知っておくべき内容かと思います。

 

 

内容については以下のページから見ることができます。

 

経済財政運営と改革の基本方針 2022

 

 

今日のコラムでは財政運営の基本方針を題材に、技術者育成というものを改めて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

改革の切り口について将来に向けた投資が前面に出ている

 

財政運営の基本方針の内容を見ると、環境変化への対応、財政運営に関する話も記載されています。

 

 

上記以外に述べられているのが「改革」に関する内容です。

 

 

新しい資本主義というものに関する是非の議論は専門家の方々に譲りますが、

改革に向けた重点分野として以下の5つが述べられています。

 

 

(1)人への投資

 

(2)科学技術・イノベーションへの投資

 

(3)スタートアップへの投資

 

(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資

 

(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

 

 

 

今までは設備やインフラなどのハードに対する議論が多かった気がしますが、

人に対する投資が真っ先に述べられているというのは、変化を感じます。

 

 

技術者育成もいわば、人への投資の作業の一つです。

 

 

今回はこのテーマについて、技術者育成の観点から考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

財政運営の基本方針の「人への投資」で重視していることとは

 

財政運営の基本方針を読むと、

人への投資として重視しているのは、

 

  • ・働き方の柔軟性
  • ・社会変化に対応できる質の高い教育
  • ・賃上げに向けた事業再編促進
  • ・貯蓄から投資へ

 

といった項目になっています。

 

 

 

それぞれについて概要に触れた後、

技術者育成の観点から意見を述べてみたいと思います。

 

 

まずは概要から見ていきます。

 

 

 

 

働き方の柔軟性については能動的なスキルアップが基軸

 

成長分野に税金を投入し、一般公募したアイデアを実践しながら自由に人が移動する、

要は推進する仕事を変更するということがまず書かれています。

 

また、この手の議論でお約束のように出てくる、「リカレント教育」を受けられるシステムを整備し、

産官学の対話を行いながら企業が学び直しを後押しするとのことです。

 

さらに生産性向上に向け、ジョブ型雇用形態などの働き方に柔軟性を持たせ、

副業兼業も視野に、働く場所にも縛られず、

専門知識・技能を持った若者の活躍を促していくことも触れられています。

 

 

 

 

 

社会変化に対応できる質の高い教育では、デジタル化や環境問題への教育支援が中心

 

デジタル化や環境問題への対応という観点から、教育機関での対応を加速させ、

学生に経済的支援を行うことで広く教育を受けられるようにするとのこと。

 

また、産学連携を強めながら新しい教育機関の開設を行いやすくし、

デジタル化促進や社会問題解決につながるような知見を習得する教育体制をつくる、

といったことが狙いにあるようです。

 

 

 

 

 

賃上げに向けた事業再編促進については、中堅・中小企業の活性化を重視

 

企業のほとんどが属する中堅・中小企業の活性化を通じ、

サプライチェーンにおける適切な分配を通じて、

賃上げに結び付けようというのがその基本にあります。

 

 

 

 

 

貯蓄から投資はその名の通り、投資をすることで手持ち資金を増やすのが基本

 

これはわかりやすい内容なので、詳細は経済財政運営と改革の基本方針を読んでいただいた方が良いと思います。

 

 

 

では、これらの内容を技術者育成という観点から考えてみます。

 

 

 

 

 

トレンドに流されない本質を見極める育成方針が屋台骨となる

 

結論から先に言うと、デジタル化、環境問題(グリーン等)のトレンドを、人材育成と結びつけるのは危険です。

 

技術者育成に限らず、人材育成に求められるのは、

 

 

「人を育てるにあたり、最も重要なスキルは何か」

 

 

という、

 

 

「本質である”普遍的な部分”に到達するための試行錯誤」

 

 

が必須です。

 

 

当社が民間の技術系月刊誌で連載している題目でも、「普遍的スキル」という単語を使っているのは、

本質を突き詰めると技術業界に依存しない汎用的スキルとなり、

つまりどのような技術者にとっても必要な普遍的である、という意味があります。

 

 

わかりやすいという意味でデジタル化やグリーン、環境問題解決という単語を使う意図も理解できます。

 

 

しかし、やはり本当に技術者育成はもちろん、人材育成を考えるのであれば、

特定の領域について言及する必要はないのです。

 

 

そのくらい、人を育てるという戦略を立てるのは難しいことであり、

本質を見極めるためには試行錯誤が必須なのです。

 

 

 

技術者育成における本質は何かについては、

本ページのコラムをご覧いただくか、

上記でご紹介した連載記事をご覧いただければと思います。

 

 

 

 

 

働き方の柔軟性を認めるのは徹底的な実践経験を経てから

 

これは特に技術者に該当することですが、

在宅勤務などの働き方で機能するのは、

徹底した実践経験を持っている者のみです。

 

 

働き方として会社に行かなくてはいけない、といった小さいことを言っているのではありません。

 

 

そもそも論として、

 

 

「技術者が自らの殻を破るような成長をするには、逃げ道の無い現場での試行錯誤が成長の源泉」

 

 

という大原則があるからです。

 

 

 

技術者が自らの成長を促す実践経験は、必ずと言っていいほど

 

 

「厳しい時間軸と、逃げ道がないというプレッシャー」

 

 

が揃っています。両方存在することが重要です。

 

 

 

 

 

このような環境になるには、対面における理不尽なやり取りや、

刻一刻と変化する状況に対応する現場での緊張感にあふれる空気に触れるしかありません。

 

 

これはオンラインなどの、デジタルでは絶対に超えられない世界だと思っています。

 

 

よって、もし本当に人材育成を考えるのであれば、技術者育成と同じ観点で、

 

 

「まずは相手がいる環境で、時間軸が明確で、プレッシャーのかかる仕事を遂行する」

 

 

ということを重視すべきでしょう。

 

 

 

技術者育成も一緒です。

 

 

若いうちに、社内外の相手がいる環境で、

厳しい時間軸で、物事をやり切るという経験こそが、

将来的には在宅を含め、働く環境を選ぶという選択肢拡大につながるのです。

 

 

 

 

 

大学は企業に勤めるための社員を育成するところではない

 

これは何度もコラムで取り上げてきたとですが、

大学というのは学術業界に貢献できる研究者を育成するところで、

企業向けの人材を育成する機関ではありません。

 

 

産学連携や企業との共同研究など、

企業の理屈に合わせた教育は私個人的には本質的な教育とは思えません。

 

 

専門学校はその専門という意味で、まだ上記の動きは理解できますが、

大学はあくまで学術業界で活躍する研究者を育成する機関であり、

それが教育という意味では本質である、

ということを改めて感じていただきたいと思います。

 

 

この辺りは以下のようなコラムでも述べたことがあります。

 

 

・関連コラム

 

大学教育と産業界の要望

 

吉野氏のノーベル賞受賞記念座談会 の記事から考える技術者育成

 

 

 

大学において学術業界に貢献する研究者を育成するということは、それが理工学系だとすると、

 

 

「理学、工学に関する理論の本質を理解し、既存理論の発展や、新たな理論の発見に向け尽力する」

 

 

ということと同意になります。

 

 

このような本質を見極めるという経験こそ、学生のうちにすべきです。

 

 

企業に勤めるようになった場合でも、現場、現物を重視しながらも技術的理論を見ながら、

本質は何かということを常に考えることこそが、

技術者を対象とした技術者育成の本質です。

 

 

 

 

 

ジョブ型は必須の考え方だがそれができる企業のマネジメントはごく少数

 

ジョブ型の働き方は、今の時代というよりも、常に求められる考え方です。

 

 

しかしながら、実情として

 

 

「ジョブ型の雇用を管理できるマネジメントはかなり少数派」

 

 

というべきでしょう。これは、当社が様々な企業と話していても痛感することです。

 

 

 

ジョブ型をやるということであれば、そもそもジョブ型とは何かということを、企業側がきちんと理解しなければなりません。

 

 

順番としては、そこが最初であるべきだと思います。

 

 

 

業務内容の明文化がジョブ型業務の必要条件

 

ジョブ型を浸透させるには、マネジメントが技術者はもちろん、

それ以外の職種でも「どのような役割を求めるのか」ということを

 

 

「明文化」

 

 

できなくてはいけません。

 

 

 

恐らく、これをやろうとすると多くの企業ではお手上げのはずです。

 

 

あれも、これも、と色々足していくと、結局何でもやってください、となってしまうからです。

 

つまり「何でもやってください」と一言書くのと変わらないような環境では、

ジョブ型は機能しません。

 

 

 

プロジェクト型業務の方が技術業務設計には適している

 

個人的にはジョブ型というよりも、業務そのものをプロジェクトした方が妥当だと考えています。

 

プロジェクト型業務は、特定の目的遂行に向け、

複数の人間が関わります。

 

この中では必然的にそれぞれの役割は明文化する必要はありますが、

あくまでプロジェクト型業務で行う業務に限定するため明文化しやすい。

 

結果的にジョブ型を遂行しやすくなります。

 

 

ただし、注意点はプロジェクト型業務は必ず「期限を区切る」こと。

 

 

終わりを明記することで、業務に緊張感が出ます。

 

 

 

この辺りは過去のコラムでも述べていますので、詳細についてはそちらをご覧ください。

 

 

 

・関連コラム

 

 

職務を明確にした ジョブ型 対応の技術者を育てるには

 

 

技術テーマは個人プレーではなくプロジェクト化する

 

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

 

経済財政運営と改革の基本方針を題材として、技術者育成の観点も入れながら考察してみました。

 

 

 

この手の文書でどうしても気になるのが、

 

 

・トレンド用語の多用が多い

 

 

・抽象的で具体的に何をするのかがわかりにくい

 

 

 

という2点です。

 

 

 

トレンド用語を使うのはつかみという意味では良いと思います。

 

 

しかし、上記で繰り返してきた通り、

そのトレンド用語について何を本質と考えるのか、

が大切です。

 

 

また、抽象的な表現だけでは、具体的に何をするのかがよくわかりません。

 

 

加えて色々と盛り込むことで焦点がぼやけてしまい、

相手に伝わりにくいものとなります。

 

 

色々なことを意識すると、結局何も伝わらないのです。

 

 

 

今回、せっかく国としても人材育成に力を入れていこう、

という意思表示がなされたのであれば、

その方針を感じつつも、上記の通り本質を自らの頭で明確化することを強く意識し、

具体的にどうするかを自分たちで考える、

という能動的取り組みが結局のところ重要なのだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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