業務の滞る 技術者育成に有効な朝ミーティング
公開日: 2019年2月9日 | 最終更新日: 2019年2月9日
Tags: 仕事の遅れる若手技術者
仕事も熱心に取り組んでおり、業務態度に問題は無い。しかし、仕事の進捗に大きな課題がある。
基本性格が真面目な方が多いといわれる技術者でよくあるケースの一つといえます。
今日のコラムでは、このような 業務の滞る 技術者育成に有効な朝ミーティングということについて考えてみたいと思います。
時間が無いと焦る若手技術者たちの深層心理
様々な企業の若手技術者と話をしていると、
– 自分の時間が無く、仕事が積み重なる一方だ
という旨を述べる方と出会うことがあります。
表現の仕方は色々ありますが、
客観的にみて彼ら、彼女らが目指しているのは、
「早く成果を出して一人前の技術者になりたい」
というものです。
言い換えると、早く成果を出すために、
「無駄を排除し、早く前進したい」
というのが深層心理なのです。
しかし、客観的に見た時、若手技術者の実情は大きく異なることを述べなくてはいけません。
焦る若手技術者の実情
成果を焦るため、業務の高効率化を求める若手技術者たちですが、
実際に色々な話を聴いてみると、意外な側面が見えてきます。
例えば、
– 仕事の優先順位を自分で決めており、重要な仕事が後回しになっているため、
手遅れに近い状態になってマネジメントから注意を受けて焦りながら仕事をしている
– 本来技術的な考察を深めなくてはいけない部分を、より経験のある他の技術者に聴く、
該当する専門書で調べる、ということを行わずに進めるため、再評価、再検討の指示を受けることが多い
– わからない部分があると、それを考える時間を無駄と考え、とりあえず放置して他の仕事をやり、
結果として後で焦って仕事をやらなくてはならなくなる
といったのが代表例です。
若手技術者の陥っている環境を客観的にみると概ねどれかに当てはまるケースが殆どです。
実は、成果を早く上げ、業務効率を上げたいという若手技術者の心理とは裏腹に、
「業務効率を大きく下げる流れを自ら作っている」
というのが実情なのです。
この事実を突き詰められた若手技術者の多くは、
指摘当初は反発しますが、個人差があるもののある程度の時間を経て、
「言われてみればその状況だと思う」
と腑に落ちるケースが多く見受けられます。
では、このような状況に陥っている若手技術者に対して、
どのような育成のアプローチを書ければいいのでしょうか。
若手技術者に自らの状況を理解させるのがすべての第一歩
上述した効率的に成果を上げることを求める若手技術者の育成の入り口は、
「若手技術者を客観的に見た時、どのような状況なのかをマネジメントが把握」
した上で、
「本人が腑に落ちる形で、自分の状況を客観的に理解させる」
ということになります。
そして、この腑に落ちるまでの時間は個人差が比較的大きのが経験上の話です。
自らの状況について腑に落ちるまでの時間の長さを決める主な要素としては、
– 技術者という専門家としてのプライド
– 人の話を理解して聴くというヒアリング能力
– 人の話を聴ける心の余裕
があります。
当然ながら
・プライドが高いほど、
・ヒアリング能力が低いほど、
・心の余裕が無いほど、
腑に落ちるまでの時間が長くなります。
逆もまたしかりです。
本人にとっては損なのは間違いありませんが、
これは個人の話になるのでなかなか外的な力で変化させるのは難しいでしょう。
ここで大切なのは、
「すべて腑に落ちなくてもいいので、やるべきアクションを具体的に伝える」
ということでしょう。
具体的なアクションなしに、技術者が完全に腑に落ちるのは難しい、
という技術者人材育成の基本が背景にあります。
技術発展は日進月歩であり、企業の生き残りには安定した売り上げと利益を生み出すことが至上命題である以上、最後は育成時間圧縮の判断も必要であることが上記の基本にあることは付け加えておきます。
効率を求めながらも焦る若手技術者にとって必要なアクション
結論から先に言うと、
「朝一の5から10分、昨日自らが行ったこと、
今日行う予定のことを上司(指導者)に口頭で報告する」
ということになります。
最初は時間がかかるかもしれないので、5分が20分、30分になっても問題ありません。
最も大切なのは、
「どんなことがあっても基本的には毎日続ける」
ということです。
「今日は時間が無いから」
「今日は出張だから」
ということを理由に、若手技術者や上司にあたる方が朝一の報告会を延期すると、
必ず消滅します。
何があっても毎日ということが鉄則です。
ここは一切の妥協をしてはいけません。
時間が無いという言い訳は、若手だろうと上司だろうと認められません。
始業時間が9時からだとして、打ち合わせや来客が9時からということは普通無いでしょう。
9時から5分間、10分間を取れないような仕事は明らかにマネジメント機能不全の状態と判断できます。
何としても時間を固定して捻出するということをマネジメントも含め徹底してください。
上司または若手技術者が出張等で不在の時は、メールでの報告が基本です。
若手技術者が昨日やったことと、今日やることを箇条書きにして上司に送れば問題ありません。
どうしてもメールが難しい場合(企業のルール、組合のルール等)は、
電話で行います。
報告する内容は上記の通りです。
もし、若手技術者が報告を行えなかった場合はきちんと指摘し、
行わせることを徹底してください。1回の見送りは致命的です。
「自分は指示したのに、若手技術者がやらないのが悪い」
という考えを上司が持つようでは、マネジメントが人材育成を放棄していることと同等とご理解ください。
口頭だけだと報告がうまくできない若手技術者に効果的な取り組み
既に述べた口頭での報告が、すぐにできる若手技術者だけではありません。
どちらかというと人に口頭で伝える、人から話を聴くということが不得意な若手技術者に、
効率を求めて焦るという傾向が強いことを考えると、報告する側は
「口頭だと若手技術者が何を言っているのかわからない」
というケースもあります。
この時は、
「事前に報告すべき内容を箇条書きにし、それを上司に見せながら報告させる」
ということが効果的です。
箇条書きにするのは手書きでも、PCで記載したものを印刷したものでも構いません。
大切なのはそれを活字にして、
その活字を共通の媒体として若手技術者は報告をし、
上司は報告を受ける、という形を作ることです。
効率を求める若手技術者は活字を作成することに拒否感を示すケースもありますが、
折角の朝の貴重な時間をそれこそ非効率なミーティングにしては本末転倒なので、
もし上司が必要と判断すれば、ここは業務命令としてやらせる気持ちで取り組んでください。
毎朝のミーティングで狙う若手技術者への育成効果
この取り組みで育成したい最重要ポイントは、
「若手技術者の論理的思考力と第三者への情報発信力」
です。
論理的思考力については繰り返し述べていることです。
若手技術者が自らの考えを整理し、
わかりやすく話す、そして書く能力のことです。
※(参考)論理的思考力に関連するコラム
第三者への情報発信力は、
自らの業務を抱え込み、一人で完遂しようとする独りよがりな業務推進法から、
チームとして取り組み、足りないところは第三者の指摘や助言で進める、
ということを進めるための基礎力です。
これらの力はいずれも技術者としての成長を促すことはもちろん、
技術者がマネジメント層になった時、
場合によってはまとめることが難しい技術者のチームを率いる際に必須ともいえる、
情報伝達力の醸成に直結していきます。
業務が滞っていると感じる若手技術者の育成のご参考になれば幸いです。
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