業務報告に関する一般的な人材育成と技術者育成の違い

技術伝承の観点からも、技術者は技術報告書という定型の業務報告媒体を活用しなければならない

 

このコラムでは一般的な人材育成と技術者育成の違いを理解いただくにあたり、業務報告という切り口で考えたいと思います。

 

 

 

 

 

業務報告とは

 

業務報告と一言で言っても様々なものがあります。

 

 

議事録(面談記録、日報、出張報告書、研修参加報告書などはその一例です。

 

 

これらの記録は、技術者に限らずどのような職種の方でも作成すべきものになります。

 

 

 

業務報告の多くで最重要なのは鮮度

 

そして上述でご紹介した業務報告において、最重要視されるのは

 

 

「情報の鮮度」

 

 

です。

 

 

議事録や出張報告書を1、2週間後に作成したとしても、

その価値は半減どころか、ほとんど無価値なものになりかねません。

 

 

これらの書類は1、2営業日以内に作成の上、提出するのが一般的です。

 

 

その理由を理解するには、作成目的を理解することが重要です。

 

 

 

業務報告の多くは上司に情報を伝え、次の指示事項の戦略立案に役立ててもらうことにある

 

業務報告は作成者自身の頭の整理という観点もあるでしょう。

 

しかしながら、最重要なのは社員の上司に当たる方々が次の指示事項をどうすべきかを考えるにあたって、その一助にすることです。

 

 

よって、一刻も早く上司に内容を伝えることが重要です。

 

ここについては、技術者も同様です。

 

 

※関連コラム

 

情報は 鮮度 が大切ということを意識させる

 

 

 

技術者にとって唯一無二の重要な業務報告媒体は”技術報告書”

 

一方で、研究開発を担う技術者を中心に、

技術系社員にとって最重要の業務報告媒体は何かと聞かれれば、

 

「技術報告書」

 

となります。

 

 

技術報告書は一般的な業務報告とは異なる側面があります。

 

 

 

技術報告書の鮮度は高いに越したことはないが、簡単には書けないのが一般的

 

当然ではありますが、技術報告書も早く作成するに越したことはありません。

 

ただ実務経験の浅い若手技術者を中心に、

技術報告書作成業務はそれほど簡単に進めることはできないはずです。

 

 

この根本的な原因は、

 

「技術報告書という文書作成スキルが低いから」

 

に他なりません。

 

 

このスキルは作成者が、

必死に質の高い技術報告書を作成し続けなければ向上せず、

しかも相当量の鍛錬が必要になります。

 

質だけでなく、量も重要というのがポイントです。

 

 

しかも後述の通り、技術報告書は技術的な専門内容に加え、

様々な分析結果やチャート、画像、プログラムなどについて、

詳細を記述の上、それをわかりやすくまとめることが求められます。

 

よって、技術報告書作成に一般的な業務報告と類似の1、2営業日以内作成、

という要件は課せることは難しいでしょう。

 

 

 

 

 

詳細事実の記述が技術報告書では最重要

 

技術報告書で鮮度より重要なのは、

 

「技術の伝承を見据えた詳細事実の記述」

 

です。

 

 

技術者が重視しがちな考察はそこまで重要ではありません。

 

 

※関連コラム

 

技術報告書で考察は重要ではない

 

 

 

技術報告書で重要なのは、

 

「ある技術者の行った実験・試験が他の技術者で再現できる情報を提供する」

 

ことにあります。

 

 

事実こそが最重要なのです。

 

 

 

実施し実験・試験については手順をできる限り詳細まで残す

 

化合物を合成したという技術報告書であれば、

使用した原料、加熱条件、撹拌条件、温度条件、

減圧条件、使用した器具や設備等、

書けるものはすべて詳細まで記述します。

 

 

機械加工であれば、加工対象の材料、

刃物、送り速度、温度、使用した加工油などの情報を記載します。

 

 

このように細かい情報を、手順の一つひとつに至るまで丁寧に記述することが肝要です。

 

 

 

 

 

業務報告における一般的な人材育成と技術者育成の違いとは

 

業務報告に関し、技術者育成と一般的な人材育成の一番の違いは、

 

 

「技術報告書という技術者が作成する業務報告媒体の作成法と添削法の指導の有無」

 

 

だと考えます。

 

 

 

一般的な業務報告と技術報告書の違い

 

改めて一般的な業務報告に使う報告書と技術報告書の違いを見てみます。

 

表 一般的な業務報告書と技術報告書の比較

項目 一般的な業務報告書 技術報告書
目的 情報の共有 技術の伝承と蓄積
重要視すべき観点 鮮度 ”事実”の詳細記述
文書基本構成 各社各様 技術業界問わず同一

 

 

このように、報告書という名称は共通であるものの、

目的や重要視すべき観点が異なっている上、

文書基本構成に対する考え方も異なるという特徴があります。

 

 

 

技術報告書作成指導は研修に加え、日常業務を通じたOJTでの継続が重要

 

技術報告書の作成法について、当社では研修プログラムが存在します。

 

しかしながら、研修プログラムでお伝えできることは基本知識と、限られた時間での演習に限られることに加え、既に述べた通り技術報告書作成スキルは、質の高い技術報告書を、ある程度の量作成し続けるという継続性が重要です。

 

 

そのためNDA締結の上、

半年以上の中長期期間にわたって技術者の実務に関する技術報告書の確認と添削、

並びにリーダーや管理職向けの添削法の指導を行うことも可能です。

 

 

実際、このような技術報告書作成業務の実務への落とし込みを目的に、

長期間にわたり技術チームの指導を行い、

技術報告書作成が定常業務となった企業も存在します。

 

 

 

技術報告書中では技術専門用語をできる限りわかりやすく記述する

 

技術者の作成する技術報告書は、

当然ながら技術的専門内容が含まれます。

 

 

ここで共通言語のように専門用語を羅列しているようだと、

将来、その内容をきちんと理解できる技術者しか読むことができず、

読者が広がっていきません。

 

 

技術者の普遍的スキルでも必要と述べている、

異業種技術に関する興味がこれからの技術力向上に必須であることを考えれば、

必ずしも専門性が同じ技術者が読むとは限りません。

 

 

技術伝承を確実なものにするためには、

読者に技術的専門性という背景を求めず、

技術者であれば専門性によらずわかるよう、

丁寧な記述が求められます。

 

 

※関連コラム

 

技術伝承の難しさ

 

 

そして日常会話の中での常識用語を、

分かりやすく言い換えることは、

技術的専門性を高めることにも効果があります。

 

 

実際に当社で技術者育成コンサルティングを行うにあたっては、

技術者の方が使う専門用語に対する説明を求めることが多いです。

 

これは結果的に技術報告書で専門用語に頼らず、

言い換えや説明付与といった読者配慮ができるようになることを狙っています。

 

 

※関連コラム

 

技術専門用語の習得が遅い若手技術者

 

 

 

技術報告書作成に関連した技術者育成のポイント

 

ポイントは以下の通りです。

 

 

技術報告書の基本理解を徹底

一般的な業務報告で使用する報告書と比較し、目的や重要視する点、そして基本構成などを事例を用いながら繰り返し説明します。

OJTに基づいた中長期での技術チームへの継続的な技術者育成支援を実施

技術者の方々が日々推進される業務に関連する技術報告書の作成、並びにその添削の指導や支援を行うことで、技術報告書が技術伝承の媒体になるまで継続的なサポートを行います。

技術専門用語に関する社内常識からの脱却

他業種の技術者にもわかるような表現や説明をできることを目的とした質疑応答を繰り返すことで、社外から見た自社技術という客観的視点を取り入れ、技術報告書をより分かりやすく記述するための意識付けを支援します。

 

 

 

 

最後に

 

今回ご紹介した技術報告書作成に関連した技術者育成は、

技術者育成コンサルティングで対応をしております。

 

 

技術者のための業務報告媒体である技術報告書を、技術伝承と蓄積、そしてこれらを通じた企業の技術力向上にご活用ください。

 

 

ご相談等がありましたら、以下の問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

 

 

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ

技術戦略支援事業

⇑ PAGE TOP