長年蓄積された技術で創出した製品の世界展開に向けた技術者育成 <お客様の声:金属部品加工メーカ>
公開日: 2023年9月1日 | 最終更新日: 2023年9月1日
技術者育成研究所(FRP Consultant 株式会社 技術者育成事業/以下、当社)の製造現場改善コンサルティングを3年という期間にわたって活用いただいた「サンコースプリング株式会社」様の主担当であった上山哲生様(現:極東貿易株式会社※ マテリアルソリューショングループ)にお話をうかがいました。
今日は、サンコースプリング株式会社様から見た当社の活動についてご紹介したいと思います。
※サンコースプリング社は極東貿易株式会社の連結子会社
技術者育成に取り組むきっかけは世界を見据えた拡大戦略
当社:当社の製造現場改善コンサルティングを検討されたきっかけを教えてください。
上山様:
2018年6月に現在所属する極東貿易株式会社から、営業部長としてサンコースプリング株式会社に出向しました。
元々商社畑一筋だったので、メーカーがどのようなところかを知りたかったという気持ちが後押ししたといえます。
商社は介在する製品やサービスに付加価値をつけるのが仕事。
これに対し、メーカーでは製品の本質や原価の事を理解できる機会だと捉えていました。この出向が技術者育成への取り組みのきっかけになりました。
経験則依存という現実を見据えた改革が必要と確信
上山様:
サンコースプリング株式会社は、常に一定の荷重出力を実現する定荷重ばねの“コンストン”をはじめとした、特徴的な製品群を有する企業です。
長年の蓄積された技術によって生み出された製品は競争力が高く、これから拡販を軸とした世界展開ができるものだと確信しました。
まずは営業として技術を理解しなくてはならないという信念に基づき、早速サンコースプリング社の技術系社員にヒアリングを行いました。
その結果、経験則的に製品ができているものの、現状に疑問を持っていない技術系社員が多いという現実に直面しました。
それと同時に比較的若手の技術系社員の中には、現状の製造工程が本当に最適か否かについて疑問を感じている者もいたことから、この企業はまだまだ成長の余地があると確信。今後の展開を睨み、今を現実として認め、それを踏まえた改革が必要と強く感じた次第です。
技術の本質的な部分の理解が課題として急浮上した
上山様:
技術の経験則依存という状況を脱するためには、製造工程の検証から始めるべきだと判断しました。製品ができるまでの技術的要素を理解できれば、工程時間の短縮や製品品質の安定化が実現できると考えたからです。
今後の世界展開を見据えれば、今以上に生産性を高める必要があります。また、営業的な観点として、折角売れたとしてもお客様からクレームが出ることは何としても回避したかったのです。よって「技術の本質的な部分」の理解を重要課題として抽出しました。
2年にわたる試行錯誤で行き詰まった
上山様:
自分なりに、技術の本質的な部分の理解に向けて現場レベルでの試行錯誤をしました。しかし、私の職種は営業なので技術的な議論は十分にできません。しかも、営業職の指示や育成もしなくてはならない状況だったため、なかなかうまく進む状況にはありませんでした。
企業として、技術的な開発を推進する体制は整えつつありましたが、このような現場に近いところまでは目が届かせるのは難しい状況でした。加えてCOVID-19の感染拡大と時期が重なったこともあり、受注状況が読めない側面もありました。このような時こそ内部改革に取り組み、上昇局面に備えるべきとの判断もありました。
そこで、自前主義にこだわらず「外部の血」を入れることで、より効率的に技術系社員を現場から変えていく取り組みの検討を開始しました。
評論だけでなく技術的根拠を「考えさせ」、「共に考える」という技術者育成の姿勢が決め手
当社:当社の製造現場改善コンサルティングの導入を決めた理由をお聴かせください。
上山様:
一番大きかったのは一方的に教えるような評論家ではなく、「考えさせ」、「共に考える」という姿勢が徹底していたということだと思います。
代表の吉田氏が技術系社員だったころに一度お会いしたことがあり、その後も不定期に情報交換という形で話を聴かせてもらうことがありました。そのような場での会話を通じ、吉田氏が押し付けるのではなく、共に技術的に成長したいという考えの持ち主であることは判断材料として大きかったと思います。
当社:
技術系社員の方々は技術的な専門性を持っているか否かだけでなく、新しいものを習得して成長しようとしているかという点を評価する傾向があることを踏まえての方針となっております。
代表の吉田が元技術者ということが、技術者の考えを先回りすることの一因となっているかもしれません。
上山様:
社長の吉田氏は打ち合わせ当日までに準備をしてきていることを感じていました。
その上で、現場の技術系社員に考えさせるきっかけを与えるという姿勢は一貫していたと感じます。加えて興味深かったのが、吉田氏の想定していなかったこと、気がつかなかったことに関する発言や議論が当社の現場社員から出た際に
「そこはわからないので、調べて後日返答する」といった姿勢で、現場目線で共に成長することを念頭に接してくれた
ことです。
このような会話を通じて、現場の技術者との距離が縮まったと感じました。技術系のコンサルタントは一方的に押し付けるという考えの方々も多いことを考えると、だいぶ違うという印象です。
当社:
技術者育成を基本とした支援は、現場の技術者からの信頼獲得が必須条件と考えて進めていましたので、ご理解いただいたことを改めて感謝いたします。
当社の吉田の技術専門領域ではない議論も多かったため、必要に応じて学会誌や学術論文の内容も議論に取り入れることで、技術的議論を深めることを狙いました。
感覚論から技術評価結果に基づく定量的技術論への技術系社員の“自発的変化”が最大の成果
当社:
当社の製造現場改善コンサルティングで獲得されたと感じられる成果について教えてください。
上山様:
元々は製造工程で何かを変えたらこう改善できました、といった感覚論が主だった印象です。
しかし製造現場改善コンサルティングを導入してある程度時間が経過した頃から、取り組みの背景から始まり、目的とする改善点は何か、それを具体的にどう進めるのか、得られた結果に対してどのような考察を行うのか、という定量的結果を基本とした業務の進め方が身についた技術系社員がでてきました。
この変化は技術系社員たち自身が必要だと感じて自発的に生じたという印象を持っています。
しかも、何となく始まって、何となく終わることもあった業務が、既に述べたような流れに基づいて工場長に“提案”し、“承認”を得てから進めるという業務の進め方も構築できたのは大きかったです。
当社:
いわゆる、プロジェクト型業務の基本を指導の中に取り入れた部分を評価いただいたと感じます。プロジェクト型業務は、実際に始める“前”の段階で、どのような背景があって、どのような目的に対し、どのような技術評価とその結果をもって目的を達成するか、という先回りを基本とした業務推進法です。
自発的に変化したというのは「考えてもらう」という基本を徹底した結果だと思います。当社のスローガンでもある
「製造業の技術者を自発的に行動し、課題解決できるエキスパートに」
を実感いただいたことに感銘を受けました。
そして感覚論を減らすため、検定や回帰分析等の統計学の基礎指導と業務への導入を進め、数字を基本とした定量的な議論の浸透を後押ししました。
上山様:
技術系社員の報告にまとまりが出て、わかりやすいという日々の好影響も感じました。恐らくですが、製造現場改善コンサルティングで技術系社員に対して行っていただいたことは、例えば営業職でも共通の部分があると感じています。
当社:
生産性の向上といった製造に関する成果は、結局のところ現場の技術系社員が自発的に課題を見つけ、その解決に取り組むという“流れ”が不可欠ですので、その傾向が出てきたことは当社としても嬉しいことです。
上山様:
それ以外に気がついたこととして、感覚論の部分もありますが雰囲気が変わったのも大きいと思います。トップダウンで意見を言いにくかった文化から、自信をもって現場の技術系社員が上長に対して話をするようになったと感じています。
当社:
初年度は技術系社員向けのプロジェクト型業務フローのOJTによる習得でしたが、2年目以降はより大きな成果に結びつけるため提案型に変えた影響と考えます。
本質的な技術者育成を広げていってもらいたい
当社:
最後に、当社に対して期待されることについてお話をいただければ幸いです。
上山様:
こちらが期待した以上のことをやっていただいたと思います。
技術者を対象にした人材育成の中で、本質的な部分に取り組んでいるので、似たような課題を抱える製造業企業でも活躍していただきたいです。
当社:
ありがとうございました。
———————————-
サンコースプリング株式会社
定荷重ばね、ぜんまい、ラッピングキャリヤ等を主力製品として展開。製品の設計、製造を行う。
2011年に極東貿易株式会社の100%子会社となる。
極東貿易株式会社
産業機械、電気機械などの大型機械を中心に、プラント関連、新素材、生物・バイオテクノロジー等の事業をグローバルに展開する技術商社。
技術者育成に関するご相談や詳細情報をご希望の方は こちら
技術者育成の主な事業については、以下のリンクをご覧ください: