2024年 技術者育成総集編
公開日: 2025年1月13日 | 最終更新日: 2025年1月13日
タグ: OJTの注意点, できる技術者をさらに伸ばす, イノベーションと企画力, メールマガジンバックナンバー, 報告書, 打ち合わせ・出張, 技術者のモチベーション, 技術者の上司とは, 技術者の普遍的スキル, 技術者人材育成, 生産・量産, 論理的思考力
今週は新春特別号として昨年のメルマガでアクセス数が多く、
読者の方の関心が高かったものを中心に抜粋して振り返ってみたいと思います。
以下の見出し部分をクリックいただくと、該当する記事に移動します。
研究開発品の市場問題原因究明に最重要の事前対応
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今日のワンポイントは、
「若手技術者も関わって研究開発した製品が、市場問題を起こした場合の原因究明対応を迅速にしたい」
とリーダーや管理職が考えた場合、
「研究開発段階で得られた材料、製造(プロセス)、検査のデータを丁寧に取得し、
量産開始後も同様にこれらのデータを継続的に蓄積することで、問題発生時にデータ比較できる」
ことを徹底してください。
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市場問題に関連する要素は、設計、材料、製造、検査に関連するものが多いこと、
研究開発時点でこれらのデータを蓄積し、当該問題が生じた場合、
その問題発生前後で変動値があるか無いかを見極めることが重要であることを述べました。
何よりこのようなことを研究開発の段階で”想定しておく”ことが肝要です。
問題が生じると、得てして何となくわかりにくい材料のせいにしがちですが、
問題の原因究明はいかにして客観的かつ広い視点で調査できるかが重要です。
ここで技術者が数値データを相対比較する力量を有することが重要であり、
検定をはじめとした統計学の技術を使うことを念頭に置かなくてはいけません。
研究開発の段階からどれだけ量産を見据えることができるのか。
そのような先を見られる考え方を、
若手技術者のうちから学ばせておくことで、
彼ら、彼女らが市場問題解決に大きな力となるでしょう。
技術評価等の委託業務の依頼ができない若手技術者
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今日のワンポイントは、
「技術評価等の業務委託の依頼のやり方を若手技術者が理解していない」
とリーダーや管理職が感じた場合、
「業務の目的、評価対象となるもの、得たい成果物、希望納期」
を明確化することをまず指示してください。
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これは多くの若手技術者にとって課題となりうる話だと思います。
委託をすることは様々な技術系企業で必要となる一方で、
「適切に業務を委託できる技術者はかなりの少数派」
というのが実情です。
当社向けに実際に有った依頼を一例とし、
目的、評価対象、得たい成果物、希望納期という、
4つの要素を明確化することの重要性を解説しました。
自らが技術者という専門職である意識を高め、
委託先に敬意を払うという、
人としての基本にも関わる部分も含まれていることに、
お気づきの方もいるかもしれません。
技術報告書を書くために集中できるまとまった時間がとれない
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今日のワンポイントは、
「技術報告書作成が進まない理由として”まとまった作成時間がとれない”」
と若手技術者が主張した場合、
「細切れの時間を使ってまず技術報告書の基本構成である実験項の項目名を洗い出す」
ことを指示してください。
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これは昨年最も読まれた記事の一つです。
それだけ技術報告書を作成する”時間”が障壁となっている、
と感じる技術者が多いのだと思います。
技術者は”自分が技術報告書を書くスキルが足らない”と発言することはあまりありませんが、
「書くための時間が無い」
ということを主張することは大変多い。
自分のスキルを客観的に見られていないか、
自尊心が低いため無力さを認めたくないのが主な原因ですが、
これらは若手技術者のうちは誰でも同じです。
ではどうすればいいか。
まとまった時間はなくとも細切れの時間はあるはずです。
それらの時間を使いながら項目の抽出を行うことで技術報告書の基本構成を決める、
ということがポイントとなります。
いきなり書き始めず、上記のようないわゆる企画作成から始めるのです。
もちろん上記の項目抽出もいうほど簡単ではありません。
歩いているとき、トイレにいるとき、電車に乗っているときなど、
実際に手を動かしていないときにどれだけ思考作業を進められるかが、
項目抽出に重要な取り組みとなります。
技術データのグラフ説明の基本中の基本
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今日のワンポイントは、
「若手技術者の技術報告書や技術プレゼン中の技術データのグラフに関する説明がわかりにくい」
とリーダーや管理職が感じた場合、
「”横軸と縦軸の単位を含む意味”、”表示されている技術データの種類”、そして”グラフで主張したい事”の3点を説明する」
ことを最初に教育してください。
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この記事も昨年公開以降、かなり多くの方に読んでいただいたようです。
裏を返すと技術データを記載したグラフの説明において、
何が重要かについて情報が錯綜して分からない、
という技術者の方が多かったのかもしれません。
実際に顧問先で技術データの発表を聴く機会もありますが、
冒頭の説明が不足しているため何を言いたいのかわからず、
一つひとつに質問をしなくてはいけない状態になることもあります。
困ったことに若手技術者だけでなく、
中堅技術者でもこの辺りの基本ができていないことも多いのです。
何を説明すべきかを想定できなければ、
データのまとめ方はもちろん、
そもそも論としてデータの取得に問題が生じているリスクもあるでしょう。
グラフの軸が何を示しているのか、
示されているデータは何か、
そしてそれを通じて何が言いたいのか。
この3点セットを明確化することは技術者として不可欠な姿勢です。
材料評価で想定外のことが生じた際に必須のテクニカルデータシートの読み方
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今日のワンポイントは、
「材料評価で想定外のことが生じた際、能動的活動として若手技術者に何を指示すべきかわからない」
とリーダーや管理職が感じた場合、
「使用したテクニカルデータシートを読み込み、材料の使用方法、保存/消費期限、記載材料データを確認の上、
手順や材料寿命に問題が無かったか、そして生じた現象と掲載材料データとの間に顕著な違いが無かったかを確認する」
ことをやるよう指示してください。
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2024年で最も多くの方に読まれたのがこの記事です。
材料系のテクニカルデータシートの活用方法を知らない技術者が多い、
ということを示唆しているのかもしれません。
驚く方もいるかと思いますが、
メーカ推奨の使用方法や管理要件を無視している、
材料データの解釈を間違えているといったことは、
企業の現場において、さほど珍しいことではないのです。
設計、生産/製造、品質保証といった業種の技術者であっても、
材料に関する最低限の知識は必要です。
ここでいう知識は、
化学系の技術者の方が想像するような化学反応や化学構造式を知らなければならない、
という意味の知識ではなく、
材料の概要を記述しているテクニカルデータシートの”解釈法”に関する知識です。
シートのどのあたりを中心に注意を払い、
それをどう各技術者に実務に落とし込むのかが重要なのです。
この力量も技術者が有すべき普遍的スキルの一つである、
論理的思考力の一種といえます。
若手技術者のうちから材料データシートの読み方を理解することは必須といえるでしょう。
ポモドーロ・テクニックは研究開発を担う若手技術者時間管理に活かせるか
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今日のワンポイントは、
「ポモドーロ・テクニック等の時間管理術を用いて、
研究開発を担う若手技術者の時間管理スキルを高めたい」
と製造業企業のリーダーや管理職が考えた場合、まず第一に、
「どれだけ時間がかかっても構わないので、
目の前の技術業務の背景、目的、実験・試験の内容を若手技術者が適切に記述できるまで理解させる」
ことが重要です。
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企業によっては時間管理技術導入に興味を有しているケースもあり、
そこで議論になるテクニックの一つであるポモドーロ・テクニックを一例に、
時間管理に関する内容をご紹介した記事です。
これ時間管理技術自体はその多くが比較的シンプルですが、
当該技術導入の狙いの根底にある考えはやはり、
「業務効率を上げたい」
というところにあることをおさえておく必要があります。
ただし、若手技術者が業務効率の議論の土台に乗るためには、
担当する技術業務の背景、目的、実験・試験の内容を適切に”記述できる”まで、
理解を深めることが前提です。
この前提が最重要であることを述べたのがこの記事です。
前述の内容が理解できた後は、ポモドーロ・テクニックに限らず、
効率を重視した取り組みにシフトして問題ないでしょう。
研究開発業務で”正解は何ですか”と言ってしまう若手技術者
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今日のワンポイントは、
「研究開発を担う若手技術者が、業務中に生じた疑問についてすぐに正解を知りたがる」
という場合、
「技術評価計画を作成させ、安全に問題ないと確認の上、
正解か否かは実験、試験などの自らの体験で確かめるよう指示を出す」
ことをリーダーや管理職は実行してください。
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これが多くの方に読まれたということは、
正解を知りたいという若手技術者が部下に居るか、
それともご自身が早く正解を知りたいと考える方なのかもしれません。
記事では研究開発業務を担当する若手技術者を想定して記載しましたが、
年齢層でいえば中堅、ベテランの技術者も対象であり、
生産/製造、品質保証を担当する技術者にも該当する内容といえます。
さらに言うと、技術職だけでなく総合職にも言えるのかもしれません。
ここで技術者は総合職に対して強みがあります。
何故ならば実際に実験や試験を行い、
何が正解かを客観的に評価することが可能だからです。
個々人の性格や立場、状況といった多数のパラメータで正解が変動するものではないのです。
技術はあくまで不変です。
安全に留意しながらも、正解を知りたいのであれば実体験をもって感じることが肝要です。
若手技術者に出張対応を任せられない
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今日のワンポイントは、
「若手技術者に出張対応を任せられない」
とリーダーや管理職が考える場合、
「”1.出張目的”と”2.出張先で決めてきてほしいこと/獲得してきてほしいこと”の2点を明確に伝えて送り出す」
ことを早い段階で実行してください。
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数年前から何度も取り上げているのがこの出張対応に関する内容ですが、
多くの方にお読みいただいているということは、
それだけ出張対応を任せられない、任せたくない、
もしくは任せたが失敗したといった感覚をお持ちの方が多いのかもしれません。
デジタル技術が進んだ今だからこそ重要な現場、現実を把握するには、
時に出張対応は重要業務の一つになりつつあります。
若手技術者に任せることで早い段階で能動的に対応できる力量を持たせ、
リーダーや管理職はより全体を見渡すような高い視点での業務に集中すべきでしょう。
若手技術者に出張対応をさせる場合は100点を目指すのではなく、
及第点を絶対に取らせることを狙うべきです。
目的と出張報告書の決定事項に該当する内容を獲得させることを伝えたら、
後は任せましょう。
リーダーや管理職にはこのよう姿勢が必要です。
若手技術者に技術者としての心得を教えたい
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今日のワンポイントは、
「若手技術者に技術者としての心得を教えたい」
とリーダーや管理職が考えた場合、
「技術的事実を大切にすることが最重要であると伝え、
リーダーや管理職は若手技術者に積極的に話しかける」
こと繰り返し実行してください。
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これもかなり多くの方に読まれたようです。
”心得”という単語は、
生成AIとのやりとりや市場分析、
そして実際の技術者やその指導者の方々との会話から、
技術者育成における本質的かつ重要なものであることが分かってきたことが、
本テーマで記事を書こうと決めた背景にあります。
よって心得を取り上げたことが、
多くの技術者の方々に響いたのかもしれません。
心得は色々な表現がありますが、
技術者にとっての心得は”技術的事実の尊重”に他なりません。
ここがずれている、または欠けているような技術者は、
どれだけ優秀でも必ず行き詰まるでしょう。
情報が多い今だからこそ、
心得について改めて考えてみてはいかがでしょうか。
地方公務員の技術職に応用したい若手技術者育成
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今日のワンポイントは、
「地方公務員の技術職に製造業の若手技術者育成を取り入れたい」
と地方公務員のリーダーや管理職が感じた場合、
「技術の専門家としての基礎を技術文章作成力で鍛え上げ、
業務はプロジェクト型で設計して通し業務経験を積ませる」
ことを徹底してください。
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これは偶然目にした、武蔵野市公開の”一般技術職のあり方について”という文書内容に共感し、
地方公務員の技術職の方向けに技術者育成の観点から何か言えないか、
と考え記事化したものです。
地方公務員の考える技術職に求める職務が、
総合職に偏ってしまっているのが大きな問題であり、
技術的な観点を取り入れるべき、といった提言を行いました。
税金で事業を運営しているため市民の要望に応えるべき、
(より正確には議会の決定事項に応えるべきと感じている方も多いかもしれません)
という話が多くある一方、
技術職として職を得た方々の技術的成長に関する記述がないのも課題です。
自らが技術的に成長するという将来像を描けなければ、
必ず離職率は高まります。
さらに言うと優秀な技術職の方から退職という選択肢を選ぶはずです。
地方公務員は日常を滞りなく過ごせるために、
日々貢献されている方々です。
だからこそ、仕事にやりがいを持っていただく必要があり、
それによって働く喜びを少しでも感じていただきたいというのが個人的な考えです。
この記事で取り上げたような考えを、
各自治体が取り入れられることを期待したいです。
若手技術者育成への生成AIを用いた技術専門用語習得への応用
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今日のワンポイントは、
「若手技術者の育成にAIを応用してみたい」
とリーダーや管理職が考えた場合、
「技術専門用語についてAIの回答について若手技術者に妥当性確認させたうえで所感を含めて説明させ、
他の技術者やリーダー、管理職と議論する」
場を設定してください。
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マスメディアや各経済誌がこれだけ取り上げている以上、
一度は触れておいた方がいいだろうということで書いた記事ですが、
やはりそれ相応の方にお読みいただきました。
重要なのは技術的専門性に関する話において、
生成AIは進化したもののまだ未熟であるうえ、
技術的に間違っていることをあたかも正しいように表現するという危うさを有している、
ということです。
旅行プランの提案など、一般論が主となる使い方であれば生成AIもいいでしょう。
また、議論の壁打ち相手にするというのも良い使い方です。
しかし、最後に何が正しいのか、何をすべきかを考え、判断するのは、
”技術者”という個人であるべきです。
この前提がありつつ、生成AIも技術者育成に活用できないか、
という考えのもと提案したのが技術専門用語に関する議論のきっかけを提供することです。
私の専門である繊維強化プラスチックを一例として、
議論の展開方法の事例を示しました。
また、教師有り生成AIの数学的な背景についても、
当社別サイトを参照して解説しています。
このような使い方をするのであれば、
生成AIも頼もしい技術者育成の補助の役割を果たせるに違いありません。
まとめ
2024年に限らずですが、
技術者育成の本質よりも、
具体的な答えを示すHow toのような内容が多く読まれています。
テクニカルデータシートの読み方についての記事は、
その代表例でしょう。
もちろんそれ自体が悪いとは思いませんが、
技術者育成の本質的な部分について、
今より多くの方に理解いただき、
それを職場で実践いただきたいのが本音でもあります。
当社が先導する技術者育成の考え方は年々浸透している実感はあり、
記事をお読みいただく方の数も大きく増加しているということは、
上記の考え方に同調いただいている方が増えている裏付けなのかもしれません。
技術者育成の本質は試行錯誤が前提であること、
そして効率を求めないことです。
技術者の普遍的スキルを強く意識し、
若手技術者の方はもちろん、
その方々を指示、指導する方々も精進する気持ちが、
企業組織の技術力を高めることにつながるに違いありません。
2025年もよろしくお願いいたします。
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技術者育成の主な事業については、以下のリンクをご覧ください: