2023年 技術者育成総集編
公開日: 2024年1月2日 | 最終更新日: 2024年1月6日
新春特別号:技術者育成の振り返り2023として昨年のメルマガでアクセス数が多く、
読者の方の関心が高かったものを中心に抜粋して振り返ってみたいと思います。
各項目名をクリックいただくと、該当ページに移動します。
指示待ちの技術者を増やさないために
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「指示待ちの技術者が多い」
と感じた場合、
「目の前の仕事”だけ”に取り組むのではなく、プロジェクト型の技術業務推進のための業務フローを構築の上、
組織としての本質的な技術課題解決に向けた足の長い技術テーマに取り組むことで自発的な技術業務推進の意味を理解させる」
ということを行うようにしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
指示待ちの技術者を増やさないためには、
小さな成果を積み上げる技術業務推進のためのフローが不可欠です。
近年、特に傾向が強くなっていると感じているのが目の前の仕事による成果主義への偏重です。
忙しく仕事をすることが正義であるという考え方が企業で主流となって久しいと思います。
結果として、目の前の仕事をやることで”やっている感”を出すという技術者が増えているのかもしれません。
別の観点から述べると、考えている時間は何も進んでいないように外から見えるため、
手足を動かしていることで業務を進めているというわかりやすい姿を社内で示す必要がある、
という心理的な部分があると感じます。
このような流れが”指示待ちの技術者を増産”していることに気がつけない管理職や経営陣は、
中長期目線で見た時に企業の技術力という軸での地盤沈下を感知できないと思います。
その一方で、このままだと色々なことが先細りになるため、
やはり中長期目線でも技術者を育成しながら、
自社技術力を高めなくてはいけないと考える企業も増えてきていると感じます。
しかし今まで目の前の仕事を行き当たりばったりでやってきた企業が方針を変更し、
いきなり技術的なテーマを掲げて中長期で取り組むというのは容易ではありません。
本メルマガでは、指示待ちの技術者を増やさないためには、
「まず中長期で技術テーマに取り組める仕組み作りから始める必要性」
について解説しています。
大きなことをやらなくてはいけない時ほど、小さな一歩を確実に踏みしめる基礎力が重要です。
若手技術者を育成する技術者に求められること
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「若手技術者の育成に対応できる技術者を増やしたい」
と感じた場合、
「技術報告書や議事録といった文書を添削させる」
ということを育成役の技術者にやらせてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメルマガはアクセス数が特に多かったものの一つです。
若手技術者の育成役となる技術者をどう育てるべきか、
もしくは自らはどうすべきかといったことを感じている方が多かったのかもしれません。
技術者育成のシステム構築における留意点に触れた後、
まずは技術報告書や議事録を添削するというところからスタートする重要性を述べています。
人の文章を確認するようになると、自らの文章力が上がることを実感するケースも増えると思います。
ただし最重要なのは、結局のところ添削を始めた時点で、
「その技術者自身が論理的思考力を基本とした技術文章作成力」
がある程度ないと適切な添削ができず、
良き指導者になれないことは理解する必要があります。
技術者を育てる技術者は、自らを見つめ直すことが求められます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「技術者が電話、対面等を避けてメールに依存したやり取りに終始する」
ことを問題と感じた場合、
「リーダーや管理職が積極的に話しかけると同時に、外部研修を受けさせる」
ということを実践してください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
電話や対面での話が苦手という技術者は増加傾向にあるかもしれません。
情報伝達手段が増え、無理に電話や対面で話をしなくても済むことが増えたことも一因だと思います。
本メルマガでは、電話を例にとり何が躊躇する要因なのか等を解説した後、
若手技術者の電話や対面でのコミュニケーションの恐怖心を和らげるため、
リーダーや管理職が取り組むべきことについて提言を行っています。
リスキリングが求められる時代の技術者育成指針
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「デジタル化やグリーン化を想定した産業構造変化に対して、技術者にどのような育成指針を示せばいいかわからない」
と感じた場合、
「最新技術を学ぶことに加え、最新技術を扱える人間を統括できる技術者になる」
ということを技術者育成方針にすることを検討してください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
政府も後押ししている施策に関連する内容であるため、
多くの方に読まれたのかもしれません。
リスキリングは技術者育成の観点からみると基本的に「オペレータ」育成の要素が強く、
また業種が偏っているという大きな問題があります。
技術者の方々、並びに技術者育成を担当する方々は、ここを見失わないことが重要です。
その上で、リスキリングが機能するのは確たる技術専門性を有する中堅技術者に限ること、
若手技術者はリスキリングに目を向ける前に目の前の仕事に注力することは極めて重要です。
今後求められる技術者像は、技術を俯瞰的に見ながら必要に応じて異業種技術を導入する等の柔軟性をもった人物だと思います。
最初に確認すべき技術報告書でよくみられるミス
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「技術報告書を添削する際、まずどこを見るべきかを理解したい」
と考えた場合、
「図表のキャプションと単位忘れ」
を確認するようにしてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こちらもよく読まれていました。
恐らくですが技術報告書を作成するにあたり、
まず何を気を付けるべきかということを知りたい技術者の方々に読まれたのかもしれません。
技術報告書を作成する技術者をはじめとした技術職の方々にとっての必須の知識であるため、
是非一読いただきたい内容です。
誤差や公差の複数積み重ねに対する二乗和導入の指導
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「誤差や公差を複数積み重ねはどのように考えるべきか」
という議論が技術的業務で出た場合、
「二乗和を活用した考え方を導入する」
ということをある程度の数学的理論も議論したうえで進めてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2022年から少しずつですが、幅広い技術業界で求められる技術的知見を事例として、
技術者育成の事を述べることを心がけましたが、
このメルマガはその一つに該当します。
当社が顧問先で実際に行った何気ないやり取りを事例に取り上げたことで、
臨場感が多少出たかもしれません。
やはりこのような基礎的な技術知見を検索機能を使って調べる方々がいるのだと、
再確認できたと考えています。
技術者育成にあたっては、
「技術者育成を行う側にも技術的な知見」
が不可欠です。
そして技術者の育成を行う方々はヒントを与えつつ、
最終的な理論は調べさせるという接し方が重要です。
指導する側がすべて知っている必要はなく、
調べさせることで若手技術者が業務に必要な技術的知見を能動的に調べ、
それを実践させることで知恵に昇華させることを後押しするのです。
二乗和は機械設計はもちろん、品質保証等で公差を扱う技術者にとって常識のはずですが、
意外と知らない方も多いようです。
統計学を主とした数学力が技術者の基礎力向上には不可欠で、
これが技術者の普遍的スキルのうち、
「グローバル技術言語力」
に該当することを合わせて解説しています。
先が見えない/見えすぎるという不安を示す技術者に投げかけたい言葉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「若手技術者が現在や将来に不安を感じる」
ということを示唆する、もしくは発言した場合、
「明確なゴールのある仕事を与えた上で、まずこの仕事を完遂させてほしい」
という言葉を投げかけてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
若手技術者の離職は多くの企業にとって喫緊の課題であり、
また若手技術者の多くが抱える悩みを取り上げました。
言いようのない不安というのは、リーダーや管理職などの企業側組織の人間からは見えにくく、
それを抱える若手技術者である当事者たちもつらいという状況になります。
不安自体をゼロにすることは難しいですが、
技術者育成の考え方を応用してプロジェクト型業務を若手技術者に体感させることで、
若手技術者達が実務を通じた成長を実感することが肝要です。
非常に大きな課題であるため、
この取り組みは多くの企業で実践いただきたいと考えています。
技術業務を通じて若手技術者個人の技術が高まる事を認識させ、
それが組織の成果につながるということを伝えることで帰属意識を持たせるというマネジメント戦略が、
若手技術者を戦略化するために大変重要です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「技術的な表現が稚拙で語彙力が低い若手技術者」
をリーダーや管理職が課題と感じた場合、
「心理的安全性を確立させた状態で、面倒でも技術的な対等議論をし、技術報告書の具体的な記述方法の指導を継続する」
ことを行ってください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
情報氾濫の時代において、語彙力向上に割ける労力が若手技術者の中で低下傾向にある。
これが語彙力に関する課題で触れるにあたって理解すべき時代背景です。
語彙力を向上させるにはOJTが基本です。
心理的安全性を担保した条件下で、
リーダーや管理職が技術的議論を若手技術者と”対等に”行うのは最良の語彙力向上を目指した技術者育成です。
加えて何より重要なのが技術報告書等の活字媒体で、
若手技術者にアウトプットさせること。
この指導は語彙力の向上に大変重要です。
語彙力の向上効率は低下の傾向にあるため、リーダーや管理職には粘り強さが求められます。
グラフで囲まれた面積をExcelだけで求める方法がわからない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今日のワンポイントは、
「CSVデータ等でプロットされたグラフデータで囲まれた面積を求めさせるという業務を通じて若手技術者の普遍的スキルを高めたい」
をリーダーや管理職が感じた場合、
「付属ソフトに依存せず、積分の基本である細かく区切って面積を足し合わせることで近似値を得るという選択肢を持たせる」
ということをやらせてください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
公開時期を考えれば、今年最も読まれたメルマガと言えます。
高校数学である積分法を応用し、
Excel等の汎用表計算ソフトで面積を求めるという内容でした。
何も考えずに情報を入れれば答えが出るソフトが増えた今だからこそ、
技術者は技術の本質である数学を改めて見直すべきだと考えています。
自作した関数を一例に、面積をどのように求めるのか解説しましたが、
ハウツーを求めて検索する方々が増えた今の時代だからこそ多く読まれたのかもしれません。
あえて不自由な、不便な環境を自らに課し、
ツールが限られる中で基本技術を活用して何ができるかを考える。
このような考え方が技術者という職種の強みを生かす源泉であることを忘れてはいけません。
いかがでしたでしょうか。
全体を通じて言えることは、
読まれた数だけを見ると技術的な解説が注目される傾向がある、
ということでしょう。
今回ご紹介していないメルマガの内容の中には、
技術者育成のより本質的な物も含まれていることから、
技術者育成の”本質”を課題として感じて動いている方は、
まだまだ少数派といえるのかもしれません。
トレンドに流されることなく、
引き続き技術者育成の本質を述べていきたいと思います。
※メルマガのご購読はこちらのサイト(外部サイトに移動します)からお願いいたします。
技術者育成に関するご相談や詳細情報をご希望の方は こちら
技術者育成の主な事業については、以下のリンクをご覧ください: