技術者育成の振り返り2022
公開日: 2023年1月2日 | 最終更新日: 2023年1月2日
今回は新春特別号として2022年のメルマガでアクセス数が多く、
読者の方の関心が高かったものを中心に抜粋して振り返ってみたいと思います。
見出しが該当する記事にリンクしています。
1. プロジェクト型技術業務を自社の技術的知見として蓄積するには
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今日のワンポイントは、
「技術者を主体としたプロジェクト型技術業務を、どのようにクローズさせると企業のノウハウになるのかわからない」
という場合、
「行ってきたことを必要に応じて小分けにして技術報告書にしたうえで、テーマ完了報告書を作成させる」
ということ行わせてください。
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技術者が技術的な実業務を推進するにあたり最重要なことは効率ではありません。
効率を議論できるフェーズにあるような普遍的スキルを相当レベルで習得している技術者が少数派である現状としては、
「技術的業務推進計画とその役割分担、大まかな流れの明文化」
という基本ができることの方が重要です。
業務効率の話を話をするのは、この辺りの基本ができた「後」です。
加えて、技術的業務で明らかになったことを技術報告書として記録を残し、
技術の蓄積と伝承に加え、
「技術的業務を後戻りさせない」
という基本中の基本を徹底的にたたき込むことが求められます。
このようなスキルを身につけるためには、プロジェクト型での業務推進を経験させることが肝要です。
技術報告書の定常的な蓄積によってテーマ完了報告書という最終報告書の作成が楽になり、
各業務の技術的な知見が蓄積していくということは盲点ともいえるでしょう。
この記事が多く読まれていたのは
「技術者がプロジェクト型業務を推進するにはどうしたらいいのか」
という関心が高まったことと相関があるかもしれません。
2. 技術者の評価で売上/利益を重視するリスク
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今日のワンポイントは、
「技術者の評価において、売上や利益での貢献を重視すべき」
という流れが主流となった場合、
「新しいことに取り組める技術者の技術力を第三者的に評価してもらう」
ということ行ってください。
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最も異論が出にくい売り上げや利益を技術者に要求することによって生じる、
より深刻な問題について取り上げました。
従業員としての勤務経験しかない技術者はもちろん、リーダーや管理職は、
本当の意味で経営を理解することはほぼ不可能です。
経営というのは売上や利益だけを見ればいいという単純な話ではないからです。
そのような経営の本質がわからない従業員に対し、
定量が容易で反対意見の出にくい売り上げや利益に対する要求を課すにあたり、
要求する側もやりやすく、受ける側も理解しやすいでしょう。
しかし技術者同士、または技術者、リーダー、管理職の間で上記のような議論をすることにあまり価値を感じないというのが私の考えです。
技術者が理解すべき重要な観点を忘れてはいけません。
技術者が企業に対して貢献すべきは、
「技術的な新しい取り組みに挑戦し、新規の技術を生み出す」
ということです。技術者を抱えるような”技術を重視する企業”の経営者の最重要視すべき観点はここのはずです。
そしてその力量を客観的に評価できるのは、
自らも技術者としての勤務経験のある第三者の技術者です。
そのような客観的、かつ技術のわかる視点を入れていかないと、
本当の意味で戦力になる技術者の力量を見逃す可能性があります。
本質的な技術者の人事考課設計をするにあたっては何が必要なのか。
そんなことを改めて考えなくてはいけないと感じている方々が増えているのかもしれません。
3. 技術的知見をまとめるには目次が最重要
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今日のワンポイントは、
「技術的な知見や情報をまとめる」
ということを行う必要がある場合、
「最初にまとめる内容について骨格である目次を決める」
ということ行ってください。
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大変多くの方にお読みいただいたようです。
技術者の普遍的スキルの一つである論理的思考力と、それを応用した企画力に関するものの入口に関する要点になります。
目次を作るというのは、得られた情報を俯瞰的にみつめ、それを自らの考えでまとめることが必要です。
様々な技術情報に触れた際、その情報を項目別に整理してそこから目次を設計できるのか。
この辺りは、技術者が日々の業務でも実行いただきたい部分になります。
実践しようとすると多くの技術者ができないことに気がつくはずです。
4. 技術系新入社員が配属されたら真っ先にやるべきことは何か
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今日のワンポイントは、
「技術系新入社員が配属されたら真っ先にやるべきことは何か」
ということを考えた場合、
「簡単な業務をやらせ、それを通じた他部署の担当者との顔合わせ」
を行わせるようにしてください。
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基本中の基本といえばその通りかもしれません。
技術者はどうしても大学の研究室のような個人プレーを土台とした振る舞いが多くなるため、
あえて取り上げましたが関心は高かったようです。
焦らずにまずは社内での人脈を作れるよう、
リーダーや管理職が配慮することが求められます。
ここは若手技術者や新人技術者に丸投げするのではなく、
社内人脈を有するリーダーや管理職がおぜん立てをすることがポイントとなります。
5. 新人技術者の技術力を高めるために重要なOJT
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今日のワンポイントは、
「新人技術者の技術力を高めるために重要なOJTは何かわからない」
ということを感じた場合、
「日々の雑用8割、残り2割で技術的な実務を経験させる」
ということを行わせるようにしてください。
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こちらの記事も多くの方にお読みいただいたようです。
やはり技術者の育成はOJTが主であるという考えが基軸にあるということの裏返しかもしれません。
雑用というと悪いイメージがあるかもしれませんが、
そのような仕事をきちんと完遂できなければ技術者としての本来の業務遂行は難しいのです。
専門的な仕事以前に、一社会人として基本業務を理解することは不可欠でしょう。
6. 正解を求める若手技術者の問題
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今日のワンポイントは、
「若手技術者が正解だけを求め、立ち止まってしまう/やらない理由ばかりいう」
ということを感じた場合、
「定理になっているもの以外は、実際の試行錯誤を行わないと正解か否かはわからない」
ということを伝え、技術業務推進を後押ししてください。
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これは日本の製造業企業において全体的に見られる傾向と感じていることに加え、
当社の顧問先の若手技術者、並びに中堅やベテランにも多い考え方です。
技術者という職種の本質を見失っている由々しき事態といえます。
危機感を覚え、実例も触れながら考え方の基本に立ち返るということの重要性を解説しました。
もし身の回りの技術者、または本メルマガの読者の方で正解を求める傾向にある場合、
即刻修正をすることを強く提案します。
今は簡単に答えが見つかる時代ではないのです。
7. 「考える時間が無い」と主張する技術者
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今日のワンポイントは、
「技術的な業務を進めるにあたり、考える時間が無いということを頻繁に主張する一方で仕事が止まっている」
ということを技術者に対して感じた場合、
「考えることは業務時間だけではない」
と伝えてください。
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公開してからの期間を考えれば、最も多くの方に読まれたメルマガのバックナンバーとなりました。
この発言も当社の顧問先の技術者から聴くことが多く、
実業務推進に支障がでる大変困った考え方です。
上記では外部動画もご紹介しました。
このような動画を観ることで何かしらを感じてもらいたかったためです。
考えることは業務時間内でやるという、
当事者意識の希薄さに伴って生じる不可解なメリハリがその根底にあると思います。
色々な意味で目の前の仕事を自分のものとして捉えてほしい、
そして危機感をもって仕事をしてほしい、
という技術者に対するメッセージとして受け取ってもらえればと思います。
8. 技術者が実践すべき技術屋気質とは何か
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今日のワンポイントは、
「若手技術者にしかるべき技術屋気質(ぎじゅつやかたぎ)というイメージを伝えたいが具体的にわからない」
と感じた場合、
「技術の”本質”に関するこだわりをもちつつも、常に視点を外に向けて近視的にならず、評論家ではなく具体的提案ができる」
という気質(かたぎ)が重要と若手技術者に伝えてください。
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技術系の従業員というとこういうものだ。
そんな固定概念(ステレオタイプ)を基本に、どちらかというと良い印象のない技術屋気質について改めて解説し、しかしその中には技術者として死守すべき大切な要素もあることを述べました。
その要素とはこだわりです。
しかし意固地になるという意味ではなく、技術的な本質に対するこだわりが大変重要です。
その上で近視的にならず、具体的な提案ができる。
技術屋気質が実は技術者にとって必要な要素の一部であるということを改めて感じていただきたいと思います。
9. やらなくてはいけないでしょうかと発言する若手技術者は組織の荷物となる
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今日のワンポイントは、
「業務に対して、若手技術者が”やらなくてはいけないか”と発言する」
という場面が多いと感じた場合、
「その仕事の意義は自分ではどう考えるか」
と若手技術者に問いかけ、実業務経験を通じた実践力が大切と理解させてください。
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どちらかと言えば、若手技術者がのびのびと仕事できる良好な職場環境でよく聴かれる発言です。
若手技術者は、若手といわれているうちにどれだけ幅広い仕事に取り組んだかでその先が決まります。
やらなくてはいけないか、といった発言によって業務の選定をするだけの経験も力量も若手技術者には無いはずです。
上記のような考え方が最後は自分自身を苦しめるということも理解し、
またその理解を促すためにリーダーや管理職が説明を重ねることが肝要です。
いかがでしたでしょうか。
昨年は、当社の実際の顧問先での技術者育成の現場での実例に基づいた内容について多く読まれていた印象です。
技術業界や企業が違えど、生じる課題が似通っているということの裏付けの一つともいえるかもしれません。
2022年を通じて技術者の育成において基本的に大きいと感じた課題は、
「当事者意識の不足」
であるという印象です。
この当事者意識の不足という問題は技術者側に大きな原因がある場合、リーダーや管理職に課題がある場合とそれぞれあり、もちろん一方的にどちらかに原因があるということはほとんどありません。
本点を技術者育成の本質的な課題の一つとして認識することが肝要であると考えます。
昨年一年を通じ、技術者育成という単語が本当の意味で理解されつつあると実感しています。
今年も技術者の普遍的スキルという所からずれずに、
技術者の育成ということをできるだけ実例も踏まえながら、
地道に情報の発信を続けていきたいと思います。
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