ポモドーロ・テクニックは研究開発を担う若手技術者時間管理に活かせるか

公開日: 2024年6月17日 | 最終更新日: 2024年6月23日

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若手技術者は時間管理術ポモドーロ・テクニックの前に目前の技術業務を理解すべき

 

 

今回はポモドーロ・テクニックを一例に、
若手技術者の時間管理スキルを高めることについて考えます。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する当社事業:技術者育成コンサルティング

 

 

 

 

高まり続ける業務効率向上へのニーズ

 

”労働時間の短縮”にスポットライトが当たりがちな働き方改革により、
若手技術者といえども実務経験を積める時間は短くなる一方です。

 

 

そのため、短時間で何かしらの結果を出さなければいけない、
という考えが主流となっています。

 

これはある程度時間をかけて技術テーマを進めることで成果につなげる、
いわゆる研究開発を担う技術者にとっても例外ではありません。

 

 

 

 

 

時間管理術の一つであるポモドーロ・テクニックとは

 

限られた時間で結果を出すスキルは、時間管理術と呼ばれることがあります。

 

そしてこの時間管理術の一つに、

 

ポモドーロ・テクニック

 

があります。

 

 

 

詳細は参照情報などをご覧いただければと思いますが、
一言でいえば25分集中し、5分休むという30分サイクルで仕事をする、
という短期決戦と休息を組み合わせる考え方です。

 

 

元々はIT業界を中心に広がったようですが、
今は業界はもちろん、老若男女問わず使っている方が多いようです。

 

 

例えば以下のような動画は多く存在します。

 

 

実際にポモドーロ・テクニックの適用有無が、
読解力試験の点数の有意差検定(t検定)によって、
有意差があると判断されたとの報告もあるようです。

 

 

この文献はオンラインで読むことができます。

 

 

※参照情報

 

Shinoda, K, POMODORO TECHNIQUE FOR IMPROVING STUDENTS’READING ABILITY DURING COVID-19 PANDEMIC, Journal Education and Development, 2020, 8, p.p.1-6

 

 

 

技術者育成の観点でも、時間をかけずに集中して取り組むことに異存はなく、
研究開発業務にも当てはめて問題ないと考えます。

 

 

しかし、それには前提があります。

 

 

 

 

 

時間管理を考える前に、目前の技術業務内容を理解させる

 

この前提を一言でいえば、

 

「研究開発を担う若手技術者に、目前の技術業務内容を理解させる」

 

となります。

 

 

本点について解説します。

 

 

 

 

目前の技術業務内容とは

 

若手技術者に業務全体を俯瞰的視点で理解させることは難しいと思います。

 

よって通常、リーダーや管理職は、
若手技術者が主担当として対応する業務を切り取り、
それをあてがうと思います。

 

この切り取られた業務が「目前の技術業務」となります。

 

 

 

 

目前の技術業務で理解すべきは背景、目的、実験・試験の3点

 

技術業務内容をざっと説明されたとして、
それをすぐに理解できる若手技術者はなかなかいないでしょう。

 

 

リーダーや管理職は若手技術者が整理して理解できるよう、
主要素をブロックとして分けて説明することが求められます。

 

 

このブロックを構成するのが、
背景、目的、実験・試験の3点です。

 

 

それぞれについて説明します。

 

 

 

背景とは

 

その業務が発生した動機づけを説明します。
例えば、

 

「何かしらの市場問題が発生し、その原因究明を行った結果、
Aというものがその原因ではないかと疑われた。」

 

というものが背景だとします。

 

 

背景の表現の基本は、その最後に

 

(だから、その技術業務は必要である)

 

という文言を加筆して違和感が無いことが重要です。

 

 

上を例にすると、

 

「何かしらの市場問題が発生し、その原因究明を行った結果、
Aというものがその原因ではないかと疑われた。(だから、その技術業務は必要である)。」

 

という流れができていることが分かります。

 

 

これにより、技術業務推進の動機づけが理解できるでしょう。

 

 

 

目的とは

 

これはわかりやすいと思います。

 

 

同様の例として、

 

 

「Aが市場問題の原因として断定することが妥当であるか否かを、Bという評価を行うことで判断する。」

 

 

となります。

 

 

Bという評価を行うのは、あくまでAというものが市場問題の原因であるか否かを理解するためだ、と分かれば、技術業務の目的を見失うことはないでしょう。

 

 

 

実験・試験とは

 

これは

 

「具体的に何をするのか」

 

を示すものです。

 

 

実験・試験というと手足や設備等を動かすことをイメージされるかもしれませんが、PCでFEMによる応力解析をする、設備を動かすためのプログラムを組む、といった電子的なやり取りだけで終了する業務も含まれています。

 

 

ここでのポイントは何となく書くのではなく、

 

「できる限り具体的に、かつ詳細に書く」

 

という観点が重要です。

 

 

 

 

 

背景、目的、実験・試験を理解し、若手技術者が記述できた後で時間管理術を実行する

 

リーダーや管理職からの説明で技術業務の上記3点を理解できたら、
次に若手技術者が行うべきは

 

「活字として記述する」

 

ことです。

 

 

頭の中で分かったと思うのと、
実際に活字化するのでは大きなギャップがあります。

 

 

活字化させることで、
若手技術者が何となく理解したと感じたことを、
明確に理解させるのがポイントです。

 

 

ここまでできれば、時間管理術などの

 

「効率だけを考えたやり方」

 

で業務を進めて問題ありません。

 

 

業務内容を理解できれば、
業務推進自体がほぼ作業になるためです。

 

 

 

もし自ら行っている業務に迷いが生じたときは、
若手技術者自身が記述した背景、目的、実験・試験に立ち返ればいいのです。

 

 

若手技術者の研究開発業務で効率を議論できるのは、
このように自らが担当する技術業務内容を十分に理解した後なのです。

 

 

 

 

 

背景、目的、実験・試験の記述が終われば技術報告書の3割は完成

 

実はここまでできていれば、

 

「技術者の普遍的スキルの一つである、技術文書作成力を活用して作成する技術報告書の”3割”は終わっている」

 

ことになります。

 

 

 

これが技術業務効率を考えた場合、大きな意味があります。

 

 

 

研究開発業務で重要なのは、
その過程で必須の試行錯誤の記録を技術報告書として残すことです。

 

 

これこそが技術伝承の本質です。

 

 

 

技術報告書のうち3割がすでに終わっていることは、
若手技術者の業務効率向上が実現しただけでなく、
技術の蓄積まで若手技術者が意識せず到達できることを意味しています。

 

 

 

このルーチンを繰り返せば、若手技術者も自らの技術業務を自ら整理し、技術伝承まで見据えた一連業務スキル効率を高めることができるでしょう。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

時間管理術を活用する以前の問題として、

背景、目的、実験・試験の3点の理解が重要だと述べました。

 

 

これはまさに技術報告書作成スキル向上に直結する内容であり、

一般的な人材育成とは異なる点といえます。

 

 

技術者育成が一般的な人材育成と異なる点について、

より詳細をお知りになりたい方は、

業務報告に関する一般的な人材育成と技術者育成の違いのサイトをご覧ください。

 

 

 

 

 

まとめ

 

ポモドーロ・テクニックをはじめとした時間管理術は、業務効率向上に効果があるものとして学術業界でもその結果が示されています。

 

 

しかしこれを研究開発を担う若手技術者にいきなり当てはめてはいけません。

 

 

まずは、技術業務の背景、目的、実験・試験について、
リーダーや管理職が若手技術者に対して丁寧に説明して理解させ、
それを理解したかを記述させることで確認させることが肝要です。

 

 

 

ここまでできて初めて時間管理術を応用した”業務効率の議論”に進むことができます。

 

 

このような取り組みが技術伝承の役割を担える技術報告書作成につながり、
長い目で見たときに企業の技術力向上に大きな効果をもたらすと期待できます。

 

 

 

 

 

最後に

 

当社では上述した内容を含む、主として研究開発を行う技術者向けの技術者育成コンサルティングを提供しています。

 

本コンサルティングでは、実際に技術チームのリーダーや管理職に業務内容をヒアリングの上、どのような手順で現場の技術者に指示を出すべきか、といったことについて具体的な手順を示すことを行っています。

 

 

客観的目線からその指示事項にわかりにくいことが含まれていないか、背景、目的が明確か、実験・試験について詳細が明らかか、といった点を確認し、必要に応じた修正提案等を行います。

 

 

技術業務の効率化や技術伝承についてのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

 

 

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技術伝承の難しさ
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