技術報告書を書くために集中できるまとまった時間がとれない

公開日: 2024年3月25日 | 最終更新日: 2024年6月23日

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技術報告書の作成は細切れの時間をつかった項目名の洗い出しから

 

 

技術者の普遍的スキルの向上に向けた具体的業務で最重要な取り組みの一つが、
技術報告書の作成であることは過去のコラムやメルマガでも何度も述べてきました。

 

 

 

しかしこの取り組みは思うように進まないことが大変多いと思います。

 

 

様々な理由が挙げられますが、
若手技術者が主な理由として主張するものの一つをご紹介し、
それに対し、リーダーや管理職がどのような指示を出すべきかについて解説します。

 

 

 

 

 

 

技術報告書が書けないのは、まとまった時間が取れないためと主張する若手技術者

 

技術報告書作成という取り組みが滞る際、
技術報告書作成スキルが未熟、
もしくは伸び悩む若手技術者に共通する主張が

 

 

 

「技術報告書作成にまとまった時間が取れない」

 

 

 

です。

 

 

 

もしかするとご自身の発言として心当たりのある技術者、
またはそのような趣旨の言動をする技術者を見聞きしたことがある方がいるかもしれません。

 

 

今回はこのような主張をする若手技術者の心理に触れた後、
リーダーや管理職が技術報告書作成に向け、
若手技術者に対してどのような指示を出すべきかについて解説します。

 

 

 

 

 

業務が進まない理由を”時間”に収束させるのは苦手意識や自尊心の低さが一因であることが多い

 

これまで様々な業界で多くの技術者の指導を行ってきました。

 

 

その中で技術報告書作成に関し、

 

「時間がないため」

 

という主張をする技術者に共通するとわかっているのが、

 

 

 

「技術報告書作成に関する苦手意識や技術者としての自尊心の低さの存在」

 

 

 

です。

 

 

 

本点についてもう少し見ていきます。

 

 

 

自尊心を傷つけずに苦手業務を避ける心理の構築プロセス

 

本当に苦手かどうかは別として、
技術報告書作成という業務が苦手かもしれないと感じた若手技術者は、
その業務を”後回し”にしようとします。

 

 

業務の振り分けがおかしいというような業務環境に問題があると言えば、
遠回しに会社体制やリーダーや管理職のマネジメント力を批判することになります。

 

 

ある程度年齢を重ねた中堅技術者や経験を有する中途採用の技術者であればあり得るかもしれませんが、実績の浅い若手技術者の方々が、いきなり会社や管理職関係者を表立って批判することは少ないはずです。

 

 

 

その一方で、もし若手技術者が自分自身の経験や取り組みを通じた成長不足によるものだと認めてしまうと、

 

 

「自分は能力がない、存在価値がない」

 

 

と解釈してしまうことがあります。

 

 

 

自分自身を冷静に見ることができればこのような心理にはならず、

 

 

「まだ書き慣れていないので、どのような手順で取り組めばいいか教えてもらえますか」

 

 

といった話が若手技術者からできるはずです。

 

 

 

しかし自尊心の低い若手技術者はその一言が出ず、
かといって自分の力量不足を認めるわけにもいかず、
当たり障りのない「時間」を原因とするのです。

 

 

 

そして時間がないという理由が自分の中で構築できれば、
あとは主観的な優先順位に基づいて技術報告書作成という業務を自分の近くから遠くに押しやればいいのです。

 

 

 

結果的に若手技術者は自分も周りも傷つけずに、
技術報告書作成という業務から逃れられると考えるのです。

 

 

 

 

 

技術報告書作成スキルを上げたいのであれば質と量を求めた取り組みが必須

 

既述の心理が存在するにせよ、

 

 

「技術報告書作成スキルは、質の高い技術報告書を多く作成することで”のみ”向上する」

 

 

ことを知らなくてはいけません。

 

 

 

王道はありません。

 

 

 

期間は無関係で、質と量の両方を求めるしかないのです。

 

 

 

技術報告書作成スキルはどのくらいの時間で成長しますか、
というご質問を受けることがありますが、
時間軸では答えることはできず、

 

 

「概ね、10-30ページ程度の量、かつ質の高い技術報告書を50報くらい書けば誰でもスキルが上がってきます」

 

 

というのが唯一の回答となります。

 

 

 

技術文章作成スキルが高い技術者は、10報程度でその力量が開花することは稀にあるものの、
多くの技術者、その量と質を達成した技術者の9割近くが何かしらの成長を見せた、
という段階を想定すると上述の回答が実績となります。

 

 

 

ただ残念ながら取り組みを開始した技術者の95%は、
その段階まで到達する前に脱落してしまいます。

 

 

脱落する心理は既にご紹介したものが一例です。

 

 

 

よって、取り組みをしないことには絶対に成長しないのが技術法報告書作成スキル、
すなわち技術者の普遍的スキルの「技術文章作成力」なのです。

 

 

いずれにしても、時間を取り組みの障害と認識しているる若手技術者の技術報告書作成スキルが向上することは期待できません。

 

 

 

 

 

技術報告書作成に時間が取れない主張が続く場合、細切れの時間を使って技術報告書の項目名抽出から始める

 

技術報告書作成の時間が取れないと主張する心理や、
質の高い技術報告書を相当量書かなければならない事実があったとしても、
相手が若手技術者である以上、
言い分にある程度歩み寄ることがリーダーや管理職に求められる姿勢です。

 

 

ではリーダーや管理職はどのようなアプローチをすべきなのでしょうか。

 

 

 

技術報告書はいきなり書き始めないのが鉄則であることを理解させる

 

時間がないと主張する若手技術者の多くが、

 

「いきなり書き始める」

 

ことをやっていると思います。

 

 

 

冷静に考えていただければわかりますが、
質の高い技術報告書を作成するためには、
業務全体を俯瞰的に理解することが必須です。

 

 

全体を見ることができて初めて、

 

・実験項に記載すべき実験や試験の内容、使用した設備や材料の情報は何か

 

・上記実験項に応じた結果は何か

 

という2点を理解できるはずです。

 

 

 

これらを理解できなければ、
技術報告書の4本柱の主軸である結論と概要を書くことは不可能です。

 

 

 

それ以前の問題として、この4本柱の背景や目的さえもずれている可能性があります。

 

 

 

全体を見えていない状態でいきなり書こうとすると、

 

 

 

「結局何を書けばいいのだろう」

 

 

 

となり、筆が進まない、もしくは進んでは戻るを繰り返すことになります。

 

これでは時間はいくらあっても足りるわけがないのです。

 

 

 

そのため、いきなり書き始めるべきではないことを、
若手技術者に理解させるのが第一歩となります。

 

 

 

最初にやるべきは技術報告書の基本構成である項目名の洗い出しと順序整理

 

技術報告書作成が不慣れな若手技術者が始めるべきは、

 

 

「技術報告書の基本構成である項目名の洗い出しと順序整理」

 

 

です。

 

 

 

その中で若手技術者に最初にやらせることは、

 

 

 

「実験項の項目名を洗い出す」

 

 

 

です。

 

 

 

技術報告書で記述すべき実験の全貌が何なのかを理解するのが、
その狙いにあります。

 

 

 

項目名だけですので、詳細は必要ありません。

 

 

ここでいう項目名には、例えば以下のようなものがあります。

 

 

・○○の合成

 

・△△を用いたXXの分析

 

・○○の加工

 

・○○の形状検査

 

 

 

上記のように箇条書きにすることで、
全体が俯瞰して見られるようになってきます。

 

 

 

リーダーや管理職は若手技術者の項目名洗い出しが終わった時点で一度確認する

 

若手技術者による項目名洗い出しが終わった時点で、
リーダーや管理職はその内容を一度確認してください。

 

 

 

確認すべきは主に2点です。

 

 

 

項目名に抜け漏れはないか

 

全体を俯瞰して見られているか否かは、
項目名に抜け漏れがないかによって判断します。

 

抜け漏れがあれば、それを追加するよう指示してください。

 

 

 

項目を細分化できるか

 

項目名は記載できていても、
それ自体が多くの要素を含んでいることもあります。

 

 

その場合、リーダーや管理職は若手技術者に対して細分化を助言してください。

 

 

以下が一例です。

 

「○○の検査」

 

 

・○○の形状検査

 

・○○の外観検査

 

・○○の非破壊検査

 

 

 

あまり細かすぎる必要はありませんが、
一つの階層分程度は細分化可否を含めてリーダーや管理職は検討し、
細分化について具体的な指示をしてください。

 

 

 

これにより、ぼんやりとした全体像において、
その輪郭がより明確に見えるようになります。

 

 

 

項目名の洗い出しは細切れの時間で行わせる

 

まとまった時間が取れないという若手技術者の主張に歩み寄っているのですから、
長い時間をかけて項目名の洗い出しを行わせてはいけません。

 

一般的には30分、長くとも1時間が限度です。

 

 

このように時間を決めた上で、若手技術者に項目名を書き出させるのです。

 

 

 

項目名の洗い出しという業務は連続性が無いため、
細切れの時間でもできるのがポイントになります。

 

 

 

項目名の洗い出しが終わったらその項目名に基づいて書かせる

 

項目名を洗い出せたら、若手技術者にその項目名に基づいた技術報告書の記載をさせます。

 

 

最初に項目名が書かれた状態のデータ内に、
各項目ごとに内容を記載していくイメージとなります。

 

 

 

項目名が決まっているので、
内容が大きく軸ブレすることはまずないでしょう。

 

 

これにより、技術報告書作成という業務のとっかかりを得やすくなり、
若手技術者の技術報告書作成業務効率が大きく向上するでしょう。

 

 

 

 

 

予め項目名を洗い出させるのは技術報告書の企画を作成することと同等

 

今回紹介した技術報告書の構成項目名を最初に洗い出すのは、

 

 

「技術報告書の企画作成」

 

 

と言い換えることができます。

 

 

 

いきなり書き始めるのではなく、基本構成の決定を先行させることで、
書き始めた後の戻りを最小限にすることが目的になっています。

 

 

 

これはまさに企画、すなわち”準備”です。

 

 

 

技術業務推進に時間をかけたくないのであれば、
準備に時間をかけることが重要です。

 

 

 

まさに急がば回れです。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

細切れな時間を使いながら、

若手技術者に技術報告書作成業務に取り組ませるため、

リーダーや管理職がどのような対応をすべきかについて解説しました。

 

 

当社では技術者育成コンサルティング事業の一環として、

短期間の研修だけでなく、中長期にわたるOJTを基本とした技術者育成支援により、

技術報告書作成業務を各企業の定常業務に落とし込む支援を行っています。

 

 

そしてこのやり方は、一般的な人材育成とは異なる部分があります。

 

 

より詳細をお知りになりたい方は、

業務報告に関する一般的な人材育成と技術者育成の違いのサイトをご覧ください。

 

 

 

 

 

まとめ

 

まとまった時間がないため技術報告書作成はできないという若手技術者の心理に触れた後、
実験項を中心とした技術報告書の構成項目の洗い出しを細切れの時間で行うことにより、
技術報告書の基本構成を決める企画につながることを述べました。

 

 

企画が決まった後の技術報告書作成は、
作業の要素が強くなるため業務の後戻りや左右の振れが小さくなる傾向にあることから、
業務推進効率が高まります。

 

 

 

今回ご紹介したように技術報告書作成業務を通じた若手技術者の成長を後押しするには、
当該業務初動で躓かせない準備が大変重要になります。

 

 

若手技術者を即戦力化するためにも、
是非取り組んでいただければと思います。

 

 

 

 

 

※関連コラム

 

技術者の イノベーション と 企画力 1:企画力とその盲点
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