若手技術者に技術者としての心得を教えたい

公開日: 2024年9月23日 | 最終更新日: 2024年9月21日

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若手技術者に伝えるべき心得は技術的事実に対し敬意を持つこと

 

若手技術者に技術者としての心得を教えたいと考えたリーダーや管理職が、
彼ら、彼女らに何を伝えるべきかについて考えます。

 

 

 

 

 

心得を知りたい若手技術者は比較的多い

 

時代によらずだと思いますが、
経験の浅い若手技術者は何を心得とすべきか、
という日々の職場での過ごし方の土台となる考え方を潜在的に求める傾向にあります。

 

 

この前提をリーダーや管理職は念頭に置くことが必要です。

 

 

 

 

 

伝えるべき心得のポイント

 

心得として若手技術者に伝えるべきことについてポイントを述べます。

 

 

 

心得はある程度抽象的でいいが端的でイメージしやすいものが望ましい

 

技術者育成では抽象的な部分を最小化し、
できる限り具体的にすることで、
実務に落とし込めるよう取り組みを設計するのが基本です。

 

 

技術者を含む技術職の方の思考パターンを考慮してのコンセプトです。

 

 

しかしながら行動指針にもつながるのが心得と考えれば、
ある程度抽象的な表現であることは許容できます。

 

 

 

ただイメージが抽象的過ぎて若手技術者がイメージできない、
という状況は避けなくてはいけません。

 

 

 

イメージをしやすくするための短文化と1点集中

 

若手技術者にイメージさせやすくするにあたり、
絶対に避けなくてはいけないのは”長文”です。

 

 

あれもこれもと盛り込んでしまうと必要以上に長文となり、また内容が多いと

 

 

「結局何が重要なのかがわかりにくくなる」

 

 

ため、心得は最重要の1点に絞ることを推奨します。

 

 

 

 

 

若手技術者が理解すべき心得とは

 

リーダーや管理職の方々、もしくは企業組織として若手技術者に伝えたい心得があれば、もちろんそれを採用し、繰り返し伝えるのが妥当だと思います。

もし明確なものが無いのであれば、
是非若手技術者に伝えていただきたいものがあります。

 

 

それが、

 

「技術的事実を大切にする」

 

ことです。

 

 

 

技術的事実を大切にするとは

 

一言で言い換えるのであれば、

 

「技術に対して嘘をつかない」

 

とも言えます。

 

 

一文で別表現すれば、

 

「忖度で技術的事実を見誤らない」

 

となります。

 

 

 

忖度を強要する雰囲気は大なり小なり組織に必ず蔓延している

 

若手技術者が技術的業務の実務経験の長い上司達に囲まれて仕事をしていると、
様々な技術業務に関し、期待される結果を感じられるようになってきます。

 

 

また”働き方改革”を錦の御旗に掲げ、
最もわかりやすい”勤務時間の短縮化”が望まれる雰囲気の中、
丁寧に仕事をするよりも早く終わらせることを、
若手技術者は期待されるでしょう。

 

 

仮に若手技術者が行った技術的業務の結果が周りの期待するものと違ったとしても、
それを技術的観点から徹底議論する時間を回避し、
”組織として求める結果はこうである”と拡大解釈しようとする雰囲気に、
若手技術者も”のまれがち”です。

 

 

 

若手技術者は上記のような環境の下で、
知らず知らずのうちに忖度し、
目の前の技術的事実から目をそらし、
組織の目を気にするようになっていきます。

 

 

こうなってはいけない、
ということを示したのが上述の”技術的事実を大切にする”です。

 

 

本点を心得として、
若手技術者に繰り返し伝えるのがリーダーと管理職に求められる姿勢です。

 

 

 

 

 

心得の若手技術者の浸透に向けリーダーや管理職が行うべきことは

 

仮に今回の記述内容を参考にしていただき、
リーダーや管理職が技術的事実を大切にする、
というのを心得として伝えたとします。

 

 

”これで終わり”という姿勢では、心得は若手技術者に浸透しません。

 

 

リーダーや管理職もアクションが必要です。

 

 

 

過去の自分に執着してしまう元技術者のリーダーや管理職

 

過去のコラムやメルマガでも触れたことがありますが、
元技術者であるリーダーや管理職は、

 

 

「若手技術者はわからないことがあれば、自分のところに聴きに来るべきだ」

 

 

と考える傾向にあるようです。

 

 

”受け身”とも言えます。

 

 

 

 

自分たちはいろいろ苦労して今のところまできた、
という自負が上記の考えが出来上がる背景に存在しています。

 

 

実情を反映している部分もあるかと思いますが、今は時代が違うことに加え、何よりそのような過去の振り返りに関する記憶は無意識に脚色されていることも多いのです。

 

 

 

”話しかける”ことで若手技術者からの信頼を獲得する

 

リーダーや管理職の方々に前述のような気持ちが内心あるとしても、
若手技術者を待つのではなく、
彼ら彼女らに話しかけることを行ってほしいと思います。

 

 

話しかけるといっても何か特別な話題を掲げる必要はありません。

 

 

ちょっとした雑談、数分の立ち話でもいいのです。

 

 

最近の様子はどうか、仕事で困っていることはないか、
という若手技術者への状況確認は鉄板でしょう。

 

 

それ以外にも、新聞でこのような記事が出ていたがどう思うか今度意見を聴かせてほしい、新しいアプリ入れたのだがうまく動かせない、といったリーダーや管理職側からの話題を振るのも一案です。

 

 

このようなちょっとしたやり取りの回数を増やすことが、
長い目線で見たときの”信頼獲得”につながります。

 

 

コミュニケーション力が重要であることは、
技術者育成に当てはまることはもちろん、
一般的な人材育成でも繰り返し言われていることです。

 

 

 

コミュニケーションは技術者育成の土台

 

このコミュニケーションは、
上下の関係にある人と人の間における、
信頼関係構築の前提となる要素です。

 

 

普段何気ない会話をしているからこそ、
その人となりを理解し、少しずつ信頼を育めるのです。

 

 

リーダーや管理職も待っているだけでは若手技術者から信頼を獲得できず、
結果、仮に心得を伝えたとしても若手技術者に浸透させることができません。

 

 

 

技術に対して嘘をつかない姿勢はリーダーや管理職も徹底する

 

当然ですが心得として伝えた以上、
リーダーや管理職もその心得を”実践する”ことが求められます。

 

 

若手技術者に対して技術的事実を大切にすべきといいながら、
当の本人は組織の都合で忖度をする、
もしくは若手技術者に忖度を強要するようでは、若手技術者から

 

 

「言っていることとやっていることが違う」

 

 

と認識されてしまいます。

 

 

 

経験が浅いといっても若手技術者は立派な大人です。
しかも若いゆえに様々なことを素直に見ることに長けています。

 

 

リーダーや管理職から見れば”自分自身の無力さを棚に上げて…”と一言いいたくなると思いますが、
上述の若手技術者の視点は事実とみて間違いないでしょう。

 

 

リーダーや管理職の方々も若い頃は上の方々の言動が良く見えていたと思います。

 

 

人に要求する以上、自分もそれを実行するという観点が肝要です。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

人材育成において心得を伝えるということは、
あまり重要視されていないかもしれません。

 

 

より正確には、各社のやり方に任せる部分で、
人材育成の一環として介入すべきではない(その必要はない)と考えられている可能性があります。

 

 

一方で技術的事実に直面する技術者は、
技術的事実を最重要視しなくてはいけない、
という職種固有の心得が存在します。

 

 

これは技術業界はもちろん、企業組織にも依存しない普遍的な部分です。

 

 

 

そのため、実際の技術的業務内で、
本心得に関する指摘や指導を日常的に行うことも可能です。

 

 

技術ミーティングや技術報告書を介した技術的議論はその一例です。

 

 

技術的結果の再現性有無の確認試験実施と、
その際の第三者の立ち合いを提案するのが代表的なものの一つです。

 

 

このように日々の業務で、
技術業界、業種問わず、実務を通じて指導できる心得が存在する、
という部分が技術者育成の特徴といえます。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する具体的な技術者育成支援の例

 

当社の技術者育成コンサルティング製造現場改善コンサルティングでの対応となります。

 

 

研究開発を主とした技術者育成コンサルティング以上に、
実際に量産向けの製造や生産活動を行う製造現場において、
今回ご紹介した心得を若手技術者に理解させることはより重要です。

 

 

例えば製造現場コンサルティングの場合、
生産現場から上がってきたデータの再現性を、
実際に他の担当技術者と確認し、
得られたデータが事実か否かを再確認するといったことを、
コンサルティングの一環として行います。

 

 

またデータのn数を増やしてばらつきの評価を統計学を使って行う、
といった技術職の専門性を活かした取り組みを提案する場合もあります。

 

 

 

 

 

まとめ

 

技術者にとって技術的事実の尊重は、
その職種の存在意義を高める大変重要な要素です。

 

 

これを当たり前と感じる方が多いと思いますが、
当たり前を実行することは言うほど簡単ではありません。

 

 

日本を含む世界中で発生している技術データの改ざんは、
その当たり前ができていない事実を裏付けているといえます。

 

 

若手技術者のうちから技術的事実を大切にすることを心得として理解させ、
それを若手技術者の血肉とするため、
日々の何気ない会話を繰り返すことで信頼関係を構築する、
そして自身もその心得を実行することが、
技術チームのリーダーや管理職に求められます。

 

 

 

当たり前を当たり前として浸透することは簡単にはいきませんが、
粘り強く、そして着実に進めていただければと思います。

 

 

 

 

※関連コラム

 

技術不正やデータ改ざんの恐ろしさ
製造業の技術者がおさえておきたい製造物責任法の要点
技術データを鵜呑みにしない

 

 

 

 

 

 

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