若手技術者が グローバルに活躍 するために英語教育に力を入れたいが、どのようにしたらいいのかわからない Vol.113
公開日: 2020年5月25日 | 最終更新日: 2020年5月23日
Tags: グローバル化, メールマガジンバックナンバー, 技術コミュニケーション, 技術者人材育成
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技術系の仕事であっても、海外の企業や研究機関、組織や個人と仕事をすることは今や珍しくなく、若手技術者に対し グローバルに活躍 してほしいというニーズは当たり前になりつつあります。
日系企業であっても海外の資本が入るようになり、
また海外企業でも日本に法人を設立するようになるなど、
海外は近い存在になってきました。
当社も技術的なマーケティングパートナーとして海外法人と提携しており、
海外とのやり取りは日常的とも言えます。
そのような中、
「若手技術者のうちにグローバルに活躍するような教育を行いたい」
というニーズが高まりつつあります。
そしてそのようなニーズの高まりに対するアプローチとして、
多くの企業が優先的に取り組もうとしているのが、
「英語教育」
です。
一例として経団連も英語教育について CEFR (ヨーロッパ言語共通参照枠)という指標を引き合いに、
英語教育の改善とその方向性につて専門家の意見に言及しています。
※ 「英語教育改革の現状と改善の方向性」を聞く
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2016/0728_08.html
※ CFERの解説の一例
https://www.cambridgeenglish.org/exams-and-tests/cefr/
この中で産業界への期待として、
留学生と日本人学生が事前課題の解決策を英語で発表している様子を紹介しながら、
企業、学校が連携した授業づくりと、採用時に企業が学生に求める英語能力基準を示す、
といったことを提案しています。
つまり、産業界という大枠においてもグローバル化に伴う語学鍛錬というのは重要だという認識なのです。
今回は研究開発の業務で海外と提携する、協力する、委託するといったことを想定し、
それに向けて若手技術者にどのような教育を行っていくべきかについて、
現状も踏まえながら述べてみたいと思います。
グローバル化は技術者にとっても不可欠な流れと留意点
グローバル化、別の言い方をすれば国の違いということを意識しない仕事が増える、
ということは昨今の流れを踏まえれば不可避といえます。
とはいえ、やみくもに海外を目指せばいいという話でもありません。
昨今の感染症拡大に関する人の流れの急激な停滞はもちろん、
それぞれの国は大なり小なり自国民、そして自国企業など、自国のものを保護します。
これは日本も同じだと思います。
そのため、海外というのはリスクと隣り合わせです。
小売業のように物を売ってお金を得るというやりとりだけであれば、
与信リスクや品質問題に関するリスクはあるものの、
売れれば基本的には手を離れます。
その一方で研究開発のようにお互いの知恵や知見を出しながら、
新しいものを生み出していくとなると、その主なやり取りというのは技術要素になるため、
知財権による争いや、その共同研究開発の費用折半に関するもめ事など、
法務関係の経験の浅い技術者の方々であれば、
始める前から思わず目をそらしたくなるような範囲にも目を配らなくてはいけません。
その一方でグローバル化のメリットもあります。
例えば業界によって該当する技術が得意な企業というものがいるとします。
その企業が日本にない、または日本だと規模が大きくて小回りが利かない企業しかいないという状況では、海外における当該技術を有する企業と組むというのは妥当な判断といえます。
以上のことからグローバル化は不可避ではあるものの、
技術系企業が研究開発のパートナーを探すといった状況にある場合、
自社に不足している技術を有する企業と連携して保管する等の技術的戦略が主目的であり、
「グローバル化が目的にならないようにする」
ということが肝要です。
グローバル化に伴う技術者にとって必要な教育
では、技術系の業務を生業とする技術者はこのグローバル化という流れにどのように対応し、
それをうまく活用しながら成長していくべきなのかを考えていきたいと思います。
結論から先に言うと、
「まずは目の前の技術的な仕事の実践経験を積ませ、英語教育は専門用語習得と文法に主軸を置く」
ということになります。
ポイントをそれぞれ見ていきます。
1. 目の前にある技術的な仕事の実践経験
特に海外での技術者に求められる力量は、
「技術的な判断とその合理性を示せる技術的背景の提示」
です。
それは、人から聴いた、または専門書等で読んだ技術知見「だけ」では不可能なアクションです。
ポイントポイントでは専門書の知見が役に立つこともあり、
また人から聞いた話も有用なことがあります。
しかし、技術的業務で何より重要なのは、
「その技術者自身がどれだけ当事者として技術的業務の経験を積み重ねてきたのか」
です。
自ら経験したことというのは評論家と全く異なる部分があります。
それは、
「具体的な提案ができる」
ということです。
この具体的な提案ができるか否かは、技術者自身の経験した技術業務の領域の広さと深さに大きく依存します。
海外企業との連携(例えば研究開発等)で有益な成果を出すのに必要なのは、
「どれだけこちら側が先方にとって有益な技術的提案ができるか否か」
ということです。
・わからないことは教えてもらおう
・こちらの持っている技術は隠しておこう
・相手の技術をできるだけ盗めることに注力しよう
というスタンスでは海外の技術系企業から本当に必要な知見が出てくるわけがありません。
本当に相手から技術を正当に盗みたいと考えるのであれば、
呼び水が必要です。
この呼び水こそが、相手を凌駕する技術業務の経験に裏付けられた提案なのです。
有益な技術的な知見を得たい、サポートを得たいのであれば、
相手を技術で引張って行くという推進力が必須です。
よって、グローバル化を目指しながら技術者の教育を進めたいのであれば、
まずは目の前の技術業務経験を徹底的に積ませることが最重要です。
以下のような評論技術者になってしまうと、海外企業とのやり取りはおろか、
国内でも戦力外です。
感染症拡大をはじめとした社会的不安定さが増す昨今にあって、
企業にとっての雇用維持は死活問題です。
企業のお荷物にならない様、技術者は今まで以上に危機感を持ったスキル向上に対する取組が必要でしょう。
そのため、徹底した実践経験を積ませるという教育方針が、
若手技術者のグローバル化を実現させる第一歩といえます。
2. 英語教育は専門用語習得と文法に主軸を置く
昨今は自動翻訳に関するアルゴリズムの発展により、
コミュニケーションの障害は減少しつつあります。
そのため、語学に関する勉学へ費やす時は減少傾向になっていくと考えています。
そして英語は言語の1種類でしかなく、
各現地ではその現地語にてコミュニケーションをとることが必要であり、
英語以外の言語についてコミュニケーションをとれるよう日本の技術者も学ぶべきであり、
同時に日本語圏外の技術者も日本企業と連携するのであれば日本語を学ぶ必要性が出てくるかと思います。
実際、海外でも日系の人材雇用が進み、日本語が流暢に話せる方が増えてきています。
→当社の主にやり取りしているフランスの技術系マスメディア担当者は日系の方で、フランス語や英語に加え、日本語も堪能です。
上記の状況を踏まえても、
技術の本質を議論する学術論文の多くが英語で書かれている実情を考慮すれば、
グローバル化という荒波にさらされる技術者に対して施す優先的な言語を英語と選択することは、
妥当であると考えられます。
そして技術者がまず最初に英語教育で学ぶべきこと。
それは、
「技術的専門用語」
です。
各技術業界において、それぞれ使用する専門用語があると思います。
当然ながらその専門用語を知っていることが重要なのではなく、
その用語を用いることで議論に参加している技術者が同じ土俵にあがることが専門用語の意義である、
ということを理解していることが重要です。
そのようなツールとして、業界ごとの共通言語である専門用語である単語の学習は不可欠といえます。
よって、日本語できちんとその意味と使い方を理解した後、
英語で技術的専門用語となる単語を覚えるというのは重要といえます。
もう一つが「英文法」です。
私個人的には英語の中で何が一番大切か、
と聞かれれば間違いなく「英文法」と答えます。
これは、英語に限らず日本語でも同じことです。
英語というと会話という話すことに重点が置かれる傾向にあり、
文法の重要性が述べられる機会が少ないことに個人的には違和感を感じています。
何故ならば、文法の基本を理解せずに相手に伝えることはもちろん、
読んだり聞いたりすることもできないからです。
そのため、まず技術者に英語教育を行うのであれば、英文法を最優先に行うようにしてください。
このあたりは以下のコラムでも述べたことがあります。
いかがでしたでしょうか。
技術者にとってもグローバル化自体は不可避の流れであり、
これから自動翻訳機能の改善や発展によって、その優先順位は下がると想定されるものの、
現段階ではそこに立ち向かう技術者が英語というツールを有することは理にかなっているといえます。
ただ、それらの基本となっているのはあくまで
「技術的業務の実践経験がある」
「技術的専門用語を理解した上で使える」
という日本での技術者としてのスキルがベースにあるのです。
さらに言うと、技術者にとってのグローバル言語は数式であること、
そして文章作成力が技術業務推進のすべての基本ということも、
それ以前の前提として忘れてはいけません。
在宅勤務や研究開発が滞る昨今において、
技術者のグローバル化に向けた基本教育検討の一助になれば幸いです。
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