自信がない若手技術者に取り組ませたい検査・分析設備導入業務

公開日: 2024年8月12日 | 最終更新日: 2024年11月15日

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自信の持てない若手技術者には検査_分析の設備導入を担当させ運用の先頭を走る裁量権を与える

 

 

自信がない若手技術者に検査・分析設備導入とその運用に対する裁量権を与える、
ということについて考えます。

 

 

 

 

 

自信がない若手技術者は想像したより多い

 

若手技術者という言葉でひとくくりにはできず、
当然ながら個人差はあるものの、
実際に製造業企業で指導する主に20代の若手技術者の方々の多くは、

 

自分に自信がない

 

 

と感じているようです。

 

 

そのような言動を表に出す若手技術者もいますが、
表面上は自信に満ち溢れているように見えて内心はそうではない方まで色々です。

 

 

 

ただ学生時代と異なる環境で、いきなり自信をもって前向きに仕事をすることが困難であることは想像に難くないでしょう。

 

 

 

自分が企業で何ができるかを見極められていない状態の若手技術者に、
自信を持てという方が難しいです。

 

 

 

この辺りは過去のコラムでも取り上げたことがあります。

 

 

 

※関連コラム

 

若手技術者に自信と 自覚 を芽生えさせるには

 

やりたいことができない という発言をする若手技術者

 

先が見えない/見えすぎるという不安を示す技術者に投げかけたい言葉

 

 

 

 

 

教育や指導を渇望する若手手技術者と、自分は自力で乗り越えたと主張したいリーダーや管理職

 

自信が無い若手技術者に共通するのが、

 

「自分の業務推進力を高めるための教育や指導をしてほしい」

 

という支援欲求の考え方です。

 

 

 

自分の力で切り開く、体感することで成長していくという考え方より、
教えてもらうという、強いて言えばですが受け身の考え方とも言えます。

 

 

リーダーや管理職から見て”甘えている”と感じることは理解できますが、
事実は事実として受け止める必要があります。

 

 

 

自分で試行錯誤して課題を乗り越え、スキルを身につけてきたという自負のあるリーダーや管理職ほど、指導や教育ではなく、成長のきっかけは自分でつかむべきだと考える傾向にあります。

 

 

 

その考えは必ずしも間違っていませんが、
都合のいいようにご自身で脚色をしている恐れもあります。

 

 

 

このような話は過去に何度か述べています。

 

 

※関連コラム

 

若手技術者がOJTで育たない

 

パワハラ と技術者育成

 

 

 

リーダーや管理職は自分の過去という基準を封印することが望ましい

 

 

20代から60代までの様々な技術者を見ていますが、
正直申し上げてスキルのばらつきは個人差の域を超えていません。

 

 

つまり、技術者育成という客観的視点から見ると、
今も昔もいうほど変わらないのではないかと個人的には感じています。

 

 

 

リーダーや管理職はひとまず”自分たちの頃は”という考えを封印したほうが賢明です。

 

 

 

いずれにしても、自信が無いという呪縛にとらわれて、
受け身になっている若手技術者を放っておくわけにはいきません。

 

 

若手技術者が育たない故の業務の停滞や技術力低下の代償は、
結局リーダーや管理職に加え、
何より最重要な最前線で業務を推進する中堅技術者が払うことになるからです。

 

 

 

リーダーや管理職はどのように技術者育成を考えるべきなのでしょうか。

 

 

 

 

 

若手技術者に自信を持たせるOJTに向いた業務とは

 

若手技術者に自信を持たせるには、
研修や指導に加え、賛否両論あるようですがやはりOJTが最も効果的である、
というのが私の考えです。

 

 

OJTとして若手技術者に対応させる業務は何でもいいというわけではなく、
以下の2点が重要です。

 

    • 1. 到達点が明確であること。
    • 2. 最終的に若手技術者が第一人者になれること。

 

それぞれ理由を述べます。

 

 

 

到達点が明確であること

 

若手技術者の不安を低減させるのが狙いにあります。

 

 

実務経験の浅い若手技術者の不安を増長する大きな要因の一つが、

 

「最終的な到達点がイメージできない」

 

ことです。

 

 

 

自信をつけさせるのが今回ご紹介する技術者育成の主目的ですので、
不安を感じるような到達点が見えにくい業務をOJTとして選定するのは回避すべきです。

 

 

 

最終的に若手技術者が第一人者になれること

 

技術者の業務スキルは継続的な実務経験によってのみ成長し、実践的になります。

 

 

とはいえ、いきなり若手技術者に企業の研究開発や生産技術の主業務の前線を担わせるのは現実的ではありません。

 

よって若手技術者にも任せられるような内容の業務を、
OJTの対象として設定することが望ましいです。

 

 

仕事を任せられることで裁量権を得て、
その状態で様々な課題解決やそれに向けての試行錯誤で得られた経験こそ、
技術者育成の本質です。

 

 

 

ではどのような業務を選定すべきなのでしょうか。

 

 

 

 

 

検査・分析設備導入と実運用業務は若手技術者に自信を持たせるのに適している

 

自信が無い若手技術者には検査・分析設備の導入というOJTで技術者育成する

Photographed by NATIONAL CANCER INSTITUTE

 

 

OJT向けの業務として選定する選択肢の一つが、

 

「検査・分析設備導入」

 

です。

 

 

 

設備導入はゴールが明確

 

この業務は最終到達点が明確です。

 

 

設備を自社に導入し、期限までに適正に稼働できるようにすることです。

 

 

 

若手技術者であっても迷うことはないでしょう。

 

 

 

導入した設備の立ち上げと初期運用を任せることが可能

 

検査や分析を行う設備の導入を実際に行うにあたり、
若手技術者は多くのことを学ぶはずです。

 

 

設備の稼働原理やできること、できないこと、
結果の分析方法などです。

 

 

これらの知識は設備導入業務を推進する中で習得できることが多く、
実際に導入する時点で若手技術者も実運用を行える第一人者になれる可能性があります。

 

 

 

リーダーや管理職が導入設備に関する検査や分析の技術に対して明るいとは限らず、
若手技術者であっても裁量権を与えることが可能です。

 

 

 

 


検査や分析を行う設備は既存設備と異なる新規設備であることが望ましい


 

第一人者として若手技術者が運用の中心になるためには、
導入する設備が既存設備と同じではなく、
仕様が大きく異なる更新設備や前例のない新規設備であることが望ましいです。

 

前例があれば前担当者の中堅技術者が存在するからです。
そのような人物の存在は若手技術者を遠慮させてしまうでしょう。

 

これでは若手技術者自らが裁量権を得た状態で、
技術業務を経験するというOJTの本質が失われます。

 

 

 

 

 

検査や分析に関する業務は技術者の普遍的スキル鍛錬に向いている

 

ここで疑問に思う方がいるかもしれません。

 

なぜ製造設備等ではなく、あえて検査や分析に関する設備を推奨するのかということです。

 

 

一番の理由は、

 

「検査や分析に関する業務は技術者の普遍的スキル鍛錬に向いている」

 

ことによります。

 

 

 

検査や分析を行う設備は技術的理論に基づいて設計されている

 

当たり前といえば当たり前ですが、
検査や分析を行う設備は何かしらの技術的理論に基づいています。

 

 

形状検査を行うCMMであれば、基本理論は三次元空間座標を想定した数学です。

 

非破壊検査装置の超音波であれば音波の伝達とインピーダンスの差異による反射現象、X線CTであればX線透過と二次元画像から三次元形状再生を行うトモグラフィーに関する知識が必要です。

 

 

常に技術的な理論を身近に感じることは、
技術者の普遍的スキルのうち、
グローバル技術言語力の鍛錬にもつながる考え方です。

 

教科書にあるような技術的な理論をベースに、
実際どのような業務を実施できるのかを体感することは、
理論と実践の距離感を感じるのに最適なのです。

 

 

 

検査や分析を行った結果には必ず検証や解析が必要

 

検査や分析は実施して終わりではありません。

 

とりあえず検査や分析をしました、
というのは技術者のやることではなく、
ソフトやロボットの仕事です。

 

 

技術者という人間が行うべきは、
得られた結果をどのように解釈するか、
それによってどのような判断を下すかです。

 

AIを使うにしても、あくまで人間のアシスタントです。

 

技術理論を感じながら導入した設備で、
自社製品の検査や分析を行い、
その結果を自分なりに解析、検証して結果を導き出す。

 

検査や分析の開始から結果に基づく判断まで行えれば、
これは”技術業務を完結させるという実践経験”となります。

 

 

自信を持てない若手技術者に是非とも経験させたい業務経験です。

 

 

 

最後にリーダーや管理職が留意すべき点について考えます。

 

 

 

 

 

導入設備に関する最低限の指示を与える

 

”任せる”という一言でいきなり丸投げされても、
若手技術者は何からやればいいかわからないでしょう。

 

  • ・どのような目的で設備を導入するのか
  • ・社内のどこに設置するのか(設置するようなサイズの設備の場合)
  • ・サイズ、稼働電圧、付帯設備などの制限に関する調査の必要性
  • ・まず声がけするならどの企業が良いか

 

上記5点程度はきちんと説明し、若手技術者に理解させてください。

 

理解度合いを確認するため、活字で書かせる必要性については既に過去の連載でも述べた通りです。

 

 

※関連連載

 

第4回 若手技術者が指示事項を理解したのかわからない 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

 

 

仕様検討についていつでも相談していい雰囲気を醸成しておく

 

加えていつでも相談しやすい状況を作り、
週に1回程度は状況を確認する機会を設定するといいでしょう。

 

自分で抱える必要はなく、
適宜社内外の人物に相談していい、
ということを若手技術者に理解させるのも重要な教育です。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

今回ご紹介した技術者育成においては、
まず若手技術者向けに検査や分析を行う設備の技術的理論の調査と共有、
そしてそれについて議論するという機会を設定します。

 

 

当然当社側に知見があれば情報を提供しますが、より重要なのは

 

「技術理論の調べ方」

 

です。信頼ある技術情報の取得法について、複数の選択肢を示したうえで、
実行に向けての注意点をリーダーや管理職、
または若手技術者の方々に直接ご説明します。

 

 

さらにその技術情報を技術者チームで共有し、
知見の共有だけでなく質疑を通じた議論により、
若手技術者の方々の得た知見を企業組織の知見として蓄積することを支援します。

 

 

本質疑応答について議事録を作成することで、
活字ベースでの情報の蓄積も目指します。

 

 

加えて最終的には検査、分析設備を導入するにあたり、
要望があれば社外メーカ担当者との面談の議事録作成と添削の指導も行います。

 

 

これにより、社外とのやり取りも技術的観点で記録として残し、
設備導入業務の着実な前進を支援します。

 

 

一般的な人材育成では技術情報の調査方法の指導は行わず、
また技術的な議論を誘発する質疑応答の進め方の支援も難しいでしょう。

 

 

議事録も単なる議事録ではなく、
技術的ポイントをきちんとすり合わせられているかといった点についても、
必要に応じて添削の指導を行います。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する具体的な技術者育成支援の例

 

当社の技術者育成コンサルティングでの対応となります。

 

 

導入を検討する設備について、
研究開発を担う技術チームのリーダーや管理職との打ち合わせを通じたヒアリングを行います。

 

そこで、どのような形で若手技術者に設備情報を取得させるべきか、
ということについてお伝えをします。

 

ご要望があれば、直接若手技術者の方々にお伝えすることも可能です。

 

 

また社外メーカ担当者との面談結果である議事録の作成方法について、
基本構成を含むテンプレートのご提案と作成法の研修、
並びにリーダーや管理職向けに添削の指導を行います。

 

 

 

 

※参照情報

 

顧問契約先企業様での1日のスケジュール例:技術者育成コンサルティング

 

 

 

 

 

まとめ

 

自信のない若手技術者に必要なのは、
技術業務を完遂させるという実践経験です。

 

 

しかし、いきなりそのような業務を経験することは簡単ではありません。

 

 

例えば研究開発テーマをやりきるというのは、
時間軸や業務内容レベル含めて若手技術者にはスケールが大きすぎます。

 

 

その一方で検査や分析設備の導入業務は短期から中期で完了できるうえ、
一般的には協力企業との協業となるため適切な支援を受けられることから、
業務難易度を下げることも可能です。

 

 

加えて当該導入業務は技術的理論に基づいた、
実製品のため技術理論の調査と理解の題材として適しており、
また設備仕様を詰める経験によって設備の中身もある程度わかるようになります。

 

 

このような技術理論と設備の仕組みを理解したうえで、
導入後はその結果の解析や検証を経験することで一連業務の経験ができます。

 

 

既存設備ではなく、新規更新や全く新しい設備が望ましく
その場合、若手技術者がその最前線を担えるでしょう。

 

自尊心を高めるのにこれ以上適した経験はありません。

 

 

そして設備導入にあたり、
様々な人や組織との調整や協業が必要であることも体験できます。

 

 

 

技術者の普遍的スキル鍛錬の観点からも、
是非経験させたい業務内容です。

 

 

 

 

※関連コラム

 

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