技術者と オペレーター の違い
公開日: 2015年2月12日 | 最終更新日: 2024年6月20日
Tags: 技術者人材育成
マスコミ、メディアでものづくり企業の”技術者”というとほぼ8割以上の確率で映し出されるのが、旋盤加工といった機械加工を行う中小企業の現場の方々です。
政府も「技術立国日本」を目指してものづくり人材の底上げ、という題名で様々取り組んではいますが、そこでいう人材というのは多くが上述した方々をターゲットとしているように見えます。
もちろんモノづくり企業の一部ではありますが、
一般的な表現方法としては少し偏りすぎているかな、
というのが印象です。
というのもこれをみる限りマスメディアでは、
”技術者”と”オペレーターの区別があいまい”
であるからです。
本コラムに関連する当社事業
高難度の職人の手前の状態がオペレーター
では、ここで質問です。
技術者とオペレーター、違いは何でしょうか?
オペレーターというのは、例えば機械加工機のようなマシンを用いて、
物を一つの形にすることを担う人を言います。
加工速度などの細かい条件設定や刃物の選定と交換タイミングといった細かいノウハウを持たなくてはならず、オペレーターを極めると”職人”という域に達することができる非常に難易度の高い職業です。
ただ、当然ながら職人と言われるレベルに到達するには何十年という長い時間が必要で、
多くの人が職人になりきれずオペレーターの位置で成長が止まってしまいます。
また、1つのことに集中しているため、柔軟性にも欠ける場合が多く歳を重ねてから”つぶしがきかない”など、人材成長という観点で後に多くの弊害が出てきます。
つまり、決められた狭い範囲の仕事を何十年も続けながらその道を極めようとする職人を目指す、
「修行中の途中経過」がオペレーターというイメージです。
この解釈ですと、マスコミで概ね映し出される技術者はその多くがオペレーターということになります。
もちろん実際に物を試作する、という意味ではオペレーターが重要なのは言うまでもありません。
技術者は新技術への挑戦と技術的知見の蓄積が責務
その一方、技術者というのは全く違います。
技術者というのは、刻々と変化する目の前の事象、しいては社会情勢も加味して柔軟に対応しながら、自らの持つ知識を駆使して業務を遂行し、実践力のある知恵を蓄積していくという、
「未知の事に対していかに挑戦していくか」
ということをできる人です。
– この世にない新製品の企画を行う。
– 実験や解析によって得られた結果を報告書としてまとめ、社内のノウハウ蓄積を進める。
– 現場で起こった問題に対して、これまでの経験、知恵、そして今持っている知識で解決策を考え、それを実行する。
この様な「未知のことに対して挑戦する」のが”技術者”です。
技術者は職人と違い、何十年もの経験は必ずしも必要ではありません。
むしろ、歳を重ねて柔軟性が衰えるころには技術者としての成長が鈍化します。
いかに短期間で”未知のことに挑戦できる力”をつけるかが技術者としてのスキルの根幹です。
言い換えると、成長に必要な時間が職人に比べてずっと短いため、職人になるよりも技術者になるほうがずっと難易度が低いのです。
ものづくり企業にはオペレーターも技術者も必要です。
欲を言えばオペレーターの域を脱した職人がいれば尚競争力が増します。
しかし、多くのものづくり企業にとってまず重要なのは、
企業の利益を生み出す技術者をいかに育てるか
ということになります。企業に利益を生み出せなければ資金が不足し、組織を維持できなくなってしまうからです。
スピード感あふれる現代において技術者の存在は必須です。
つまり技術者とオペレーターの違いをきちんと認識し、優先順位を意識しながらも、それぞれに特化した育成を考えるという事が重要なのです。
そして技術者の量と質を高めて企業の資金的競争力を上げる一方で、オペレーターの中から職人を育て上げ、機械ではまねできないものづくりの技術を磨くことで新興国との差別化、つまりブランディングをはかる。
このような人材育成戦略がこれから必要となってくるに違いありません。
最後に
当社では、研究開発を行う技術者向けの技術者育成コンサルティングに加え、製造現場改善製造現場改善コンサルティング提供しています。
技術者育成コンサルティングでは、主に技術報告書の書き方、
技術テーマ企画書の作成法、技術専門知識の能動的学習法、技術プレゼンといった、
技術を基軸とした業務インフラに関する指導や支援を行います。
中長期目線での契約の場合、NDA締結の上、実際に技術チームの打ち合わせなどに参加し、現場での支援を行います。
また、製造現場改善コンサルティングは、動画を主体とした技術伝承はもちろん、
決まったことを適切に行うだけでなく、現場の最前線で感じた違和感の追求、
改善への取り組みのきっかけとなる、感覚論の対極にある客観的技術評価の手順について、
統計学や品質工学の考え方も取り入れながら、丁寧に指導を行います。
これにより現場のオペレーターを、
現場改善余地を考え続け、それを自ら解決できる実行力を有する技術者への変化を促します。
研究開発実務力強化や製造現場の技術力向上についてのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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