製造業における最重要課題

製造業における最重要課題

製造業にあるものづくり企業存続にもかかわる利益の根幹は何でしょうか?

当然ながら付加価値のある製品を販売することです。

では、その付加価値のある製品を具現化する、つまり開発するのは誰かとなればそれは「技術者」ということになります。

製造業の製品の最も大切な部分の一部を担っているのが技術者なのです。

その技術者たちも例外ではありませんが、年功序列に基づいた収入体系が一般的な日本の製造業では、年齢が高くなるほど収入は上がってきます。

裏を返せば、収入があまり高くない若い段階から、付加価値の高い製品を世に送り出し、会社に利益をもたらすことができれる技術者が多ければ「人件費の費用対効果が極めて高い」という事になります。

そして、この若手技術者が会社に利益をもたらすような成果を発揮するための土台が、人材育成という事になります。

よって、若いうちからその力をフルに活かし、会社の利益に貢献できるような戦闘力を有する技術者を養成することは、結果として企業の利益率を上げることになります。

若手技術者、その若手を指導する技術者、両者の問題点を早い段階で解決し、技術者人材育成のシステムを構築し、人材の成長スピードを高めることは、企業の体質を改善することにつながるのです。

しかしながら一般的な企業において技術者の人材育成は後回しになりがちです。

何故かというと、人材育成の重要性を理解している人事部門や人材開発部門の人間のいうことを技術者はその専門性至上主義の考え方から受け入れず、技術者は技術者で、「技術者が陥りがちな人材育成パターン」で紹介した、職人系、体育会系、軍隊系、放置系のどれかに収束していくからです。また、人材育成に時間とお金をかける余裕がない、という企業もいることでしょう。

この状況にいち早く気が付き、若手技術者に自主的に課題を見つけ、それを解決できる力をみにつけさせることに成功した企業こそ、今後生き残れると考えます。

しかし、実際のところ取り組み自体はあまり機能していないようです。

ここで客観的なデータを1つご紹介します。

厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」という中で、1980年から2005年の25年間の従業員の平均年齢推移を示したデータがあります。

調査対象は日本の製造業の企業すべてです。

このデータによると、平均年齢は38.4歳(1980年)から40.7歳(2005年)まで2.3歳上昇しています。

しかし、賃金推移に関する調査結果である厚生労働省の「毎月勤労調査」では、2000年を100とした場合の賃金指数は、

63.8(1980年)から96.3(2005年)となっています。

実は1997年の103という賃金指数を示した後、賃金指数は低下の一途をたどっています。

これは、すなわち企業が従業員の年齢によって給与を上げるという従来の考え方ではなく、給与の上昇も頭打ちになっていること意味しています。

貨幣価値の変動を考慮したとしても、平均給与上昇は平均年齢上昇に対して近年反比例の関係が見られ、年長者の増加に対し利益の増加による給与上昇につながっていない可能性を示唆しています。

そのくらい企業はスピード感を持って若手技術者を育成し、利益につながる成果を出し続けることを求められている、ということを示すデータの一つと考えることができます。

売り上げや利益が上がらない状況に追い込まれたときに多くの企業が実施するのが、余剰人員や設備の削減、製品の低価格化と薄利多売の加速といったところだと思います。

もちろん、どちらも大切な施策であると考えます。

しかし、年齢を重ねた経験豊かな技術者や研究者の除外は、経験がきちんと若手に伝承されていない、もしくは若手がきちんと仕事を担えるまでに成長していない場合、その後の企業の成長にとって大きな弊害となるのは間違いありません。

言い換えると、給料の高い年長者から人員削減をするにあっても、若手を高いレベルで業務遂行できるレベルまで育成しておくことが大切であるということです。

さらに、新興国の台頭が激しい昨今にあって、人の手をかけてものを作る製造業で薄利多売路線を打ち出してしまうと、仕事は効率や低コスト化だけが主題目となり、企業に安売りのイメージがついてしまうことに加え、より大きな問題として、

企業の利益の要となる技術を生み出すはずの優秀な技術者、研究者から、仕事にやりがいを感じられなくなることで組織を去っていきます

若手技術者、優秀な技術者、研究者を組織につなぎとめるために最も重要なこと、それは

技術者、研究者自身に成長している

と実感させることなのです。

技術者は成長していると実感するほど自主的に難易度の高い事や、客観的に見て価値がありそうなことを自主的に進めるようになります。これこそが、エンドユーザーに対する付加価値となり、製品価格の下落を抑え、利益を生み出すための切り札となるのです。価格の下落が抑えられれば利益率の低下も防ぐことができ、企業体質の改善につながっていきます。

来たるべきリスクに備えるという観点でも、若手技術者の人材育成というのは極めて重要な課題であると考えることができます。

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