技術不正やデータ改ざんの恐ろしさ

昨今の日本を代表するメーカの不正や改ざんに関する話を耳にするたび、
日本の製造業の危うさを感じます。


大手自動車メーカによる品質管理体制の不正、
大手鉄鋼メーカによる材料データ改ざん、
といった耳を疑うような話が次々と出ています。


このようなニュースを目にすると、


– 大手メーカ故の規模の問題点だ


– グローバル競争の厳しさゆえの弊害だ


といった本流とは異なる議論に陥ることも多いようです。

 

ここは今一度、技術というものについて振り返る必要がありそうです。

 

 

技術は決してうそをつかない「真実」


技術者に限らず、研究者でもそうですが、
基本的に技術、およびそれに関連する科学などは決してうそをつきません。


得られたデータを見るとき、
技術者はどうしても


– 自分に都合のいいように(自分の成果になりやすいように)


– プロジェクトの都合の良いように(仕事が前に進むように)


– 会社の都合の良いように(上司や上層部、経営者に評価されるように)


という


色眼鏡


をつけて技術データをみる、品質保証体制を運営するということが起こります。

 

第三者から見れば明らかにおかしいことも、
その企業の文化に基づいた長年の慣習になってしまうと、
当たり前のこととして根付いてしまうのが実情です。


しかし基本的に技術に基づくデータや、
要件を満たした製品を安定的に生み出す品質保証における製品データは、


絶対にうそをつかない真実


です。

 

自動車修理工場から世界的な企業に育て上げた本田宗一郎も、


技術に真摯たれ


という言葉を残しています。


出てきたデータに正面から向き合う。


安全なものを生み出すものに手を抜かない。

 

技術者として当たり前のことを当たり前のように教えられることが、
若手技術者だけでなく、中堅以上でも機会が無いというのが末恐ろしいのが実情です。

これは私が様々な企業と仕事をする時に強く感じる実感です。

 

 

技術が真実であるという原則を死守するために


昔からデータの改ざんや品質保証体制の意図的な抜け穴というものはありました。

昔はしっかりしていて今はダメということは決してありません。

そのため技術が真実であるということを守り抜くには一人ひとりの意識が大切になります。


私が顧問先企業の指導でも実践していることを3点ほどお伝えしたいと思います。

 

 

1. どのようなものも必ず受け入れ検査を

 

様々な原材料や部品を納入し、それを用いて製品にするというのは常日頃行うことです。

特に大量生産や部品点数が多いものについては、


メーカの出荷検査書


のみで問題ないかを確認し、受け入れているというケースが極めて多い。

 

これは協力メーカや納入メーカは技術に対して真摯である、
という「性善説」に基づいています。


しかしながら、私の実体験でこの性善説を支持する経験はほとんどありません。


私の実際に担当していた仕事、現在の顧問先企業の仕事でも、
検査をせずに出荷した、検査データを改ざんしていた、
原因不明の問題が発生したが、工程をブラックボックスにされたため、
原因究明と解決に非常に時間がかかった、
というのは枚挙に暇がありません。


そのため、指導する企業で重視しているのは、


「受け入れ検査の徹底」


です。

 

冒頭紹介した材料データ改ざんの件については、
(発表が真実とした場合)自社で受け入れ検査(出荷検査)をしているメーカは早々に問題ない、
という発表をしました。


これは技術データの妥当性を自社で再確認しているゆえにできたことです。


また問題が生じた時、その問題の原因究明にも自社検査のデータはとても役に立ちます。


問題が起こった時、その原因究明と解決に最重要なのは真実を述べるデータ。


これを自社内できちんと持っておくことの大切さに追加の説明はいらないと思いますが、
初期の立ち上げ時によくある現場からの声は、


「検査工程を増やすとビジネスが成り立たない、利益が目減りする、人が居ない」


というもの。

 

私が指導し、その指導を受け入れてくれる企業は、最後は上記の主張を取り下げ指導に応じたアクションを起こしてくれますが、最後までここを理解してくれない企業が居ることも事実。


まだそれほど多くのものを作っていない、
製品出荷開始からそれほど期間が経っていないことから明確な問題はでていませんが、
もし問題が起こった時、データがないためその解決に多くの時間を有し、
結果的に大規模な損失と企業のブランドイメージの失墜につながる
ことでしょう。


限られた大企業はまだ資金があるためこれを乗り切る、
または銀行が融資を申し出る(背景から力がかかる場合もあるでしょう)、
といったことはありますが、中小企業であればそのまま廃業の道しかありません。


しかし粉飾決裁と投資失敗という2つの間違いを起こした大手電機メーカのように、
事実上、事業の多くが廃業状態になるということも現実に起こっていることを忘れてはいけません。

 

 

2. 定期的と抜き打ちの監査を実施する

 

やはり現場の管理体制、データの取得方法、取り扱いなど。

このようなことについては現場で現実と現物を見るしか手がありません


協力メーカや部品納入メーカに対し、現場を確認する監査を実施するようにしてください。

そして、ここの監査についても一切の手を抜かず、
問題点があるのであればそれが解決するまで生産は始めない、
というくらいの徹底した態度が必須です。


監査においては細かい記録を残すこと、
そして何より写真画像をベースとした画像の証拠を残しておくことも重要です。
写真画像が残っていると、その後も同様に行っているのか、ということを容易に確認できます。


さらに定期的な監査に加え、不定期の抜き打ち検査も重要です。

 

常に同じようにやっているかに加え、問題はいつ起こるかわからないということも背景にあります。

 

 

3. データはデジタルに加えアナログを取得する


長期にわたりデータを取得する場合は特にですが、
デジタルデータに加え、アナログデータの取得が重要です。

協力メーカはもちろん、自社内の検査に対しても同じことが当てはまります。


長い時間にわたって記録する温度や湿度の管理データなど、
これらのデータを記録することが重要な場合はあります。


反応性の化学製品の管理などが一例です。


このような長期にわたるデータの場合、
今の時代はデジタルで取得するのが当たり前であり、
ペーパーレスの観点からも必要であるということは理解しています。


その一方で、デジタルデータはデータの加工が極めて容易。


CSVの拡張子であればエクセルファイルで適当な関数を入れてしまえば、
それらしいデータに変更できます。


その一方でアナログチャートの改ざんはデジタルより難しい。


そのため、長期取得データを中心にデジタルデータとアナログデータを同時に取得し、
両者に相違が無いか、といったデータの検証に使うことを企業には指導しています。


このようなアプローチも真実であるデータに人の介在を最小化するものとして有効です。

 

 


いかがでしたでしょうか。


技術は真実。


しかしそこに人の介入があると都合のいいように変化する。


それを完全には除去できない以上、
受け入れる側にもそれなりの姿勢が必要。


そのようなことを感じていただければと思います。

 

損失などが出れば訴訟などの手はありますが、
それ以上に大切なのは仕様を満たした製品を安定して出荷し続けること。

訴訟に時間と労力をかけている間、売上だけでなく、顧客からの信頼も低下を続け、最悪の場合、企業存亡の危機に陥ります。

 


お金も大切ですが、お金を出してくれる顧客をより大切に思うという基本的な姿勢こそが、技術者最大の武器なのではないでしょうか。

 

今一度、若手技術者だけでなく、彼ら、彼女らを指導する方々も再認識いただきたい点です。

 

 

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