ゴールに向かう 道筋 は一つではない
公開日: 2018年5月11日 | 最終更新日: 2018年5月11日
Tags: OJTの注意点, 技術者の自主性と実行力を育むために
技術者は数学という共通言語を使いながら、
一見複雑な事象を明快に 道筋 立てて説明することを本質的に得意とします。
この傾向は指導にも出る場合があります。
より具体的にはあるゴールに導くために、
途中経過含めて細かく指導するのです。
これはどちらかというと優秀かつ面倒見のいい中堅から若手技術者に多い指導方法です。
そういう意味ではこのような技術者の指導を受けられる若手技術者は恵まれていると見るべきでしょう。
とはいえ、課題もあります。
今日のコラムではこのような指導方法のどこが問題で、
どのようにして若手技術者を誘導すべきなのかを考えてみたいと思います。
細かく指示を出せる技術者人材育成の課題
道筋まで細かく指導できる技術者というのは、
本人が技術の本質を理解しており、それを伝える力があることを意味しています。
これはとても大切なことで、技術者を育てるにあたって極めて重要な資質を有していると考えられます。
上記の育成方法すべてが間違っているというわけではありませんが、
このやり方を押し付けてしまうと指導する指導者以上の技術者には育たず、
指示待ちになってしまう可能性を高めます。
それだけではありません。
細かく指示を出せる、そして本質的な部分を理解している、
ということは、
「自らの指示事項から少しでも外れるとそれを許すことができない」
ということにもなります。
ここが最大の問題点といえます。
途中経過の脱線を許せないことによる弊害
当然のことですが技術者も一人の人間です。
個々人の考え、やり方があり、自分に合った流れというものもあります。
怪我や事故の危険がある、という場合は厳しく制限しなくてはいけませんが、
そうでない場合は個人の裁量である程度やらせてあげることが技術者の人材育成には大切です。
あまりにも途中経過まで口出しをしすぎると、
若手技術者は目的を達成するために頑張ろう、ではなく、
「怒られないようにするにはどうしたらいいか」
という思考回路になります。
そうすると指示待ちになり、自ら考えて行動するという、
技術者にとって最も重要な成長の芽を摘んでしまうのです。
これを回避するためにもやり方を考えなくてはいけません。
技術者の特性を上手く活用して育成につなげるための指示方法
技術者は基本的に一人で考え込むことを好む傾向があります。
考え込んでしまって物事が進まないのでは大問題ですが、
考える時間を与えるということも大切な技術者人材育成です。
そして、
「自分で考えたことを試してみてその後何が起こるのか身をもって体験したい」
と好奇心が多くの若手技術者の心の中に、大なり小なり本質的に備わっています。
これを上手く使うのです。
より具体的には、
– 業務目的
– 達成したいゴール
– 期限(時間)
の3点を伝え、後は任せるというのが最善の方法です。
目的とゴールについては理解しているか否かを確認する意味でも、
目の前で活字として書かせることをお勧めします。
そして具体的にいつまでにそのゴールに到達してほしいのかについても伝えます。
業務の目的、到達したいゴール、時間軸の3情報さえそろえば、
どのようなルートをもって進むべきかということについて考えるのに十分です。
3つの情報をベースにどのように進むのかは若手技術者が自分で考えるのです。
そして自分の立てた計画に沿って自ら業務を推進し、
そこでうまくいったこと、いかなかったことを実体験として学ぶのです。
これこそが技術者人材育成において、技術者の個性を活用した重要なアプローチといえます。
任せるは放置とは違う
目的、ゴール、時間軸の情報だけわたし、後は任せればいい。
そういうと「放置」する技術者もいます。
若手技術者の指導というのは指導する側の技術者にとっては負荷が大きく、自らの時間がとられるという認識が一般的です。
それ故、任せる=放置、と考える傾向があるのです。
残念ながら放置してきちんと業務推進できるような若手技術者はほとんどいないと思います。
ここで必要なのは、
「フォローというマネジメント」
です。
より具体的には、
– 何か困っていることはないか、と声をかける
– 状況を把握するために話を聴き、進捗を調べる
– 上記の状況によっては必要なサポート(助言、助力等)をする
といったことになります。
これは技術者に限らずだれにでも当てはまることですが、
業務を行う当事者は視野が狭くなりがちです。
一歩引いたところから状況をみられる技術者の指導者層の方からのフォローは、
若手技術者にとっても苦境打破と自らの知見を広げるのに必須です。
このような育成を通じ、
技術者が本質的に好む自分で考えるという余地を十分に残しながら、
しかし、必要に応じたフォローが入ることによる知見拡大、
という育成フローが可能となっていくのです。
このようにしてやり切った業務は終わった時に、
「自分でやり切った」
という充実感と、
「技術者指導者層の方の知見に助けられた」
という感謝の気持ちを抱けるようになるでしょう。
技術者人材育成のご参考になれば幸いです。
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